
今日の産経朝刊は、日米安保特集を組んでいる(4面)。
また、1面ではシリーズ企画「安全保障新時代」の第4部「米軍再編と日米同盟」の「@交渉の舞台裏」が。
4面の特集については、日米安保の経緯と現況がよくまとまっている。
あまり詳しくないひとには、ちょうど1枚、よい資料になると思うので、おススメ。
(既にこの分野にある程度見識のある人には、特に真新しい話はない)
一部、個人的に印象を持った点など。
■1面「米軍再編と日米同盟 @交渉の舞台裏」
> 安全保障政策にあまり関心がないとされる首相は、再編問題をあくまで「基地移転という内政上の問題」とする事務方の説明に、引きずられてもいた。
こうした考え方だと、実に首相の動向が腑に落ちる。ゆゆしきことだが。
たしかに首相周辺は、内政に関わること以外でこの問題に対処する意志が欠けているように見える。というよりも、この問題が今後将来長期間にわたり我が国に与える影響の重大性をあまり理解していないようにも。
非常に不安だ。
■4面 日米安保特集 「識者談話」
☆☆ 西元徹也氏(元統幕議長)
> 「不安定の弧」に東端からアクセスできる日本の戦略的地位は「9・11」(米中枢同時多発テロ)の後、飛躍的に高まった。冷戦時代よりも今の方がはるかに価値があり、そこからトランスフォーメーションに伴う在日米軍再編が提起されている。
日本の戦略的地位について、実に同感だ。ここまで認識を同じくする著名人は(失礼ながら)、西元氏がはじめてだ。
まだ研究中なのでいずれ別稿としたいが、不安定の弧を中心に、また非対称化、テロ的攻撃手段の拡散ということから、新たな地政学が生まれつつあると思う。
> 「対米追随論」や「巻き込まれ論」といった誤解が国民に広がらないよう、政府は戦略的意義や国民の利益になることを説明すべきだ。日米安保の再定義も必要だ。
この点も同感だ。このblogでも常々唱えてきたが、とにかく政府は、安全保障に関して国民への説明努力ということが全く見られない。国民どころか、野党に対してさえも。説明して理解を求める努力をせず、表面的技術的にお茶を濁すということが多すぎる。その積み重ねがさまざまな矛盾を膨らませていくのだが、それをまた表面的な手法で誤魔化して後代へ先送りするということを続けているように見える。
☆☆江畑謙介氏(軍事評論家)
> 米国は(中略)湾岸戦争やイラク戦争の経験もあり、他国と常に連携できるわけではないと考えている。逆に英国、日本は戦略展開拠点として重視される。戦略上の位置とともに、両国とも価値観が同一で政治的に安定しているからだ。
同感だ。
> 日本は(中略)「大人の対応」をすべきだ。今さら極東条項の解釈にこだわるようでは対応できない。
意図が不明確ではあるが、もし、極東条項の解釈にこだわるな、現状で行け、ということなら到底賛同できない。
そのような誤魔化しはもう止めにすべき。戦略的に妥当であると判断するのなら、条項を改正すべきであるし、そうできないのであれば、受け入れるべきではない。条項の恣意的な解釈運用は、結局有事において混乱のもとであるに加え、政治的にもきわめて国民に不誠実、かつ万事がなし崩しになる危険性もある。
しっかり意義を国民に説明し、世論を整え、誤魔化しのない政策をとるべきと思う。