2005年10月06日

戦略入門002


 せっかくなので、最初は2号も続けて転載しておきましょう。



Samurai Magazine vol.008■水曜>戦略戦術危機管理No.02>概論(02)

04/07/14
■ はじめに ■


 勝利の原則、それも最も根本的な大原則とは何か…
 それが今日のテーマです。

 勝ち方、勝つ条件というものをつきつめて考えていくと、そこにあるのはきわめてシンプルな原則なのです。

 一見して単純に過ぎるといって、読み飛ばさないようにしてくださいね。
 実のところ、今日お話しすることは、基礎であると同時に奥義でもあるのです。つまり、このことさえ真に理解していれば、それだけでいついかなる状況についても正しい戦略を立てることができるのです。

 いろいろな戦法は、すべてここからの派生に過ぎません。
 しかし、真に理解すれば、ですよ。ですから、今日お話しすることは、じっくり読んで、この先ずっと、みなさんの頭に刻みつけておいてください。



           ■ Index ■

            --根本原則--

            1 強者必勝
            2 強者必勝の戦略
            3 優勢点
            4 無数の「場」と「時」



1 強者必勝

 勝負の原則は、簡単です。まさに一言で足ります。
 それは、「強い方が勝つ」ということです。

 相手より強い側が勝つ、というのが戦いの大原則です。今日は、この一点をしかっりと覚え、理解してもらうだけで十分といえるくらい、重要なことです。

 こういうことを言うと「バカにするな」という声も聞こえてきそうですが、実際、この、最も単純にして絶対の原則を理解して戦う人というのは非常に少ないのです。これは、われわれの歴史の偉大な登場人物たちにおいてすら、言えます。

 よろしいですか、戦いに勝つのは強い側です。強者が弱者に勝つのが戦いというものなのです。
 繰り返しますが、強ければ勝ち、弱ければ負ける、それが戦いです。
 そして、すべての戦略・戦術はここから始まるのです。

> 勝負の根本原則、「強い方が勝つ」ということ。



2 強者必勝の戦略

 「強い方が勝つ」ということがわかれば、戦略の最初の目標は、いかに自分を相手より強者にするか、ということになりますね。
 これこそが戦略というものです。

 戦略というと、いかにも奇抜な作戦、奇策の類を想像する人が多いでしょうが、それは大きな誤解です。最も優れた戦略とは、戦いの場に、相手に数倍する兵と武器、装備を集めることなのです。
 戦場において敵に数倍する大軍と物資を集めることができれば、もはや奇をてらった小細工は必要ありません。堂々と正攻法で敵を討つことができます。

 たとえばもし仮に、相手に百倍する軍を集めることができれば、これはもはや戦いにはなりません。全く戦わずして勝利を得ているということになるでしょう。これこそが最高の戦略なのです。
 織田信長、豊臣秀吉という戦巧者は、いつも常に、この点を非常によく理解していました。

 信長というと桶狭間の奇襲戦法ばかりが有名となり過ぎ、そのために多く誤解が生じているところですが、彼が最も意を用いたのは常に、いかに敵に数倍する大軍・大量物資を予定戦場に集めるかということでした。
 数倍の大軍でもって敵を押し潰す、これこそが王者の戦略です。
 信長は歴史上屈指の大戦略家です。
 また、戦巧者には源義経のような人がいます。彼の戦いの特徴は、少数騎馬による奇襲戦法ですが、それが彼を戦略家と呼ばず戦術家と呼ぶゆえんです。
 (※戦略・戦術: 後ほど、下部「補講」参照ください。)

 では・・・ 大軍を集め得ない弱者には、戦略はないのでしょうか・・・?



3 優勢点

 「強者必勝」とは、弱者がけっして勝てないということを宣言しているものではありません。力の強い者だけが常に勝利するのなら、われわれは「戦略」などというものを難しく研究する価値などありませんね。

 戦略の問題は、「強者必勝」の場をいかに設けるかということです。
 たとえば、先の例にも出た桶狭間の戦いを考えてみましょう。

 一説に、織田軍の3千に対し今川軍は3万〜4万の大軍と言われています。
 これが通常の会戦を行えば、敵の十分の一ほどの兵力である織田軍は、すぐに蒸発してしまうことでしょう。「強者必勝」そのままです。
 しかし、信長が戦いを挑んだのは、田楽狭間とか桶狭間と言われる、丘陵と丘陵の狭間になった狭隘地に今川が軍を進めているところでした。(近年、この地形については様々に異論、新説が出ていますが、今日はそれはおいておきましょう。)
 そのような地形では、大軍も細い縦隊となって行軍するほかありません。ここで信長は横合いの斜面を駆け下って今川本陣に攻め入りました。こうなると今川はその大軍を活かすことはできず、一度に戦闘に参加するのは結局織田軍とそう変わらない、あるいはより少ない数にならざるを得ません。また、今川はその場に小休止をとり、猛暑の中で涼をとるべく甲冑、具足を外す許可まで与えていたともいいます。

 ここに局所的な「強者の逆転」があります。
 ほぼ同数の、具足まで外し食事にありつこうという兵と、甲冑・具足に身を固めて突撃を加える兵では、後者こそがこの場における「強者」となるでしょう。
 したがって、動員兵力で弱者であっても、ここに信長は自らを強者とする場を設け、やはりここにも「強者必勝」の原則を実現するのです。

 こういったところに、「強者必勝」という原則の深みがあるのです。ですから、われわれが考えねばならないのは、自分を強者とする場をいかに設けるかということなのです。

 自らを強者とするために最初に考えるべきことが、前項で述べたように、まずは敵に数倍する大軍と大量物資を準備することなのです。それが不可能ならば、考えをめぐらせて、自らを強者となし得る「場」や「時」を設定するのです。



4 無数の「場」と「時」

 戦いの中には、無数の「場」と「時」があります。これらの「場」や「時」をとらえて、いかに自らを強者とし得る「場」「時」を設定するかが、「強者必勝」原則の実運用といえます。

 また、敵に数倍する戦力を用意する能力があったとしても、では果たしてそれら全てをタイムリーに同時に戦場に投入できるのかどうかも問題です。
 必要な場所・必要な時に集結させ得ないとすれば、敵が強者となる局地がでてくる可能性もあります。

 重ねて強調しますが、戦いの原則は「強者必勝」です。そして、自らをいかに「強者」とするかが戦略です。すべての戦略はここから生まれます。
 読者のみなさんの中には、すでに戦略や戦術というものに興味をもたれ、「集中と分散」「各個撃破」・・・などという用語をご存知の方も多いと思いますが、これらは全て、おなじくこの大原則から出ているものなのです。

 たとえば、先ほど触れた大軍の集結に関する問題を例にしてみましょう。
 敵はあなたに倍する大軍であるとします。3千を率いるあなたに対して、敵は6千。しかし、もし敵がいくつかの城から少しずつ戦場へ集結しているとすればどうでしょう。その場合には、あなたは先手をうって、3千を率いて、敵の2千、あるいは千五百、千、五百といった部隊をそれぞれ各個に討っていくことができるかもしれません。

 また、前号で例に引いた新撰組の近藤勇の戦法を考えてみましょう。
 いくら彼が剣の腕に覚えがあろうとも、自らに数倍する数の敵と互角の戦いをすることは不可能です。しかし、廊下や階段などの狭いところに自らを置けば、向かい合う敵は常に一人となり、一人ずつを斬っていけばよいことになります。こうすると、敵は数を活かすことができず、剣の強い近藤は、常に一対一で自らを「強者」とすることができます。

 これらは些か簡単すぎる例ですが、いったん大軍と向き合ってしまっても、牽制や陽動、その他の手を尽くして敵の分散をはかり、これを各個撃破するという手法も行われます。


 今日お話ししたことは最も重要なことです。きっと、あなたの頭に刻んでおいてください。

> 強い方が勝つのが戦いです。どうやってあなたが強くなる場を設けるか、
> それが戦略です。




(※補講) 戦略と戦術

 戦略と戦術という言葉について、後日またお話しするところがありますが、まずは次のようなイメージを持っておいてください。

 戦略は大きな枠組みです、その戦略の枠内での個々の戦いを戦う法が戦術と言えます。
 たとえば、戦争をするのかしないのか、するとすれば何時、どのようにするのか、そして軍と必要物資をどれほど投入するのか、また、外交関係をはじめあらゆるものを考慮し動員するのが戦略レベルです。実際の戦闘については、どの部隊で、何を目標にどこを攻撃するのか、あるいはしないのか、それが戦略決定です。

 その戦略の中で、戦略目標達成のため、個々の戦場、戦闘で勝利するために算段するのが戦術です。

 またあるいは、もっとイメージ化すると、サッカーで、どの選手を使って、どのようなフォーメイションで戦うか、これを戦略とすると、各選手のプレーが戦術です。

 やや乱暴な説明になりましたが、今日のところはそういったイメージを持っておいていただければ十分です。

 一般に「戦略の失敗は戦術で補うことはできない」と言われています。
 どんなに優秀な兵士、プレーヤーが育っていても、戦略そのものが誤っており、戦略レベルで敵にしてやられていると、兵士やプレーヤーがどんなに頑張っても、勝利は困難であるということです。
 ビジネスでもそうですよね。いくらすぐれた営業マンが頑張っても、営業戦略自体が的外れであれば、彼らの努力は徒労になりかねません。
 逆に、戦術の拙さは、戦略でカバーすることができます。

 もし大のサッカー好きの方がいれば、先日のEURO2004(欧州選手権)を思い出してもらえれば格好の例が散見されます。
 ギリシアの勝利は戦略の勝利です。
 ポルトガルもチェコも、戦術レベルではギリシアをはるかに圧倒していましたが、しかし勝ったのはギリシアだったのです。サッカーファンは個々のプレーに注目する人が多いので、ギリシアは面白くないサッカーをするという声が多く聞かれましたが、「戦い」「戦略」に関心をもつ人間にとっては、最高に面白いサッカーをするチームでした。(素晴らしさに私は感動しました)個人能力の低さを戦略で補うサッカーと言えます。
 また、ポルトガルとオランダの対戦では、ポルトガルの戦略と戦術が見事にマッチしていました。オランダの最もキーとなるMFロッベンを封じ込めるという戦略を、ポルトガルDFミゲルの高い能力(戦術)で完遂したのです。

 さて、サッカー、ましてEURO2004をご覧にならなかった方にはつまらなくなってしまったかもしれませんが、スポーツ観戦は、戦略眼、戦術眼を養うに最適です。野球、サッカー、アメフト…それぞれ特色に応じて素晴らしい教材になります。ぜひ活用してください。

 また稿をあらためてお話しする折がありますが、今日のビジネス、あるいは現代戦には、サッカーあるいはラグビーにおける戦略が特に参考にしやすいのではないかと思います。
(趣味としては私は大の野球ファンですが…)

 今後は、もっと多くの人が観ているであろうスポーツの試合などを例に出すよう注意していきますのでお楽しみに。




 「強者必勝」の「強者」とは、もちろん数だけの問題ではありません。
 では、「強者」とは何なのか、、、
 それが次回の発端です。



□Samurai Magazine
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posted by Shu UETA at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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