2004年10月02日

沖縄米軍基地本土移転

 昨日は、初めて小泉総理の口から、沖縄米軍基地の本土への一部移転を方針としていることが表明された。

 在沖縄米軍 首相本土移転に初言及 自治体に応分の負担促す(産経)

 沖縄の米軍基地、一部本土移転を検討へ…首相明言(読売)


 概要は次のとおり。

 
  •  首相、1日、都内での講演
  •  在日米軍基地再編問題に関する沖縄県の基地負担軽減策について
  •  「名前が挙がると自治体は反対する。沖縄以外の地は、持ってもいい、という責任ある対応をしてもらいたい」と述べ
  •  本土も応分の負担をすべきだとの考えを示した。
  •  沖縄県内の米軍基地の一部本土移転を示唆するもので、首相が言及したのは初めて
  •  また「政府が沖縄以外の都道府県のどこに持っていくかということを考え、自治体に事前に相談し、自治体が受け入れた場合には、『日本はこういう考えを持っている』として、米国と交渉する」と語った

  •  首相は同日夕、官邸で記者団に対して
  • 「沖縄の苦しさや負担を分かち合うことが大事だ」と述べた。
  •  首相はすでに、こうした方針に基づき、沖縄米軍基地の本土移転の検討を防衛庁、外務省に指示している

  •  官房長官は会見で「(移転先の)めどがたったわけではない」と述べるにとどまった。


 まず、私個人的には、米軍基地の一部本土移転には賛成である。
 理由は、
 1 今日の軍の運用能力において最早地理的に沖縄に固執する死活的理由はない
 2 そうした状況下で、沖縄への偏在は過剰であり県民の心理的負担は理解できる
 3 戦略的にも、限定的エリアへの施設集中は問題がある
 4 米軍再編にあわせ米国から移転の申し出がある今は、よい機会である

 ただし、実現に際して、移転先の選定は困難をきわめるものと思われる。

 選定にあたっては、受け入れてくれそうな地域ならばどこでも、あるいは手を上げた自治体に即断といった姿勢や、合理的根拠を欠く単なる地理的平均といったことは避けたい。(実際には、安易にそうした方向に進む可能性の高さを危惧するが… 得意の政治的「処置」「処理」「やっつけ仕事」的に ^^;)

 選定の原則としては、
 まず必要条件として、当該米軍部隊及びシステムとして在日米軍自体が機能を適切に発揮し得る地理的条件を満たすこと。
 何にせよどうせ駐留させるならば、それを有効に機能させなければ意味がない。また、ここを詰めた案でなければ、結局対米交渉で難航し、時間的ロスが大きい、あるいは立ち消えになる可能性もないとは言えない。
 しかし、さほど困難な条件はあまりないと思われる。
 (であるが故によく考慮してほしい)

 沖縄駐留の米軍、しかも移転候補にあげられている海兵隊をはじめとする部隊が必要としているのは主として、訓練場、そして展開時に必要な空軍基地である。
 基地周辺の警備力等については、基本的に米軍は現地治安機関等をあてにしていない。また、便宜をいうならば、沖縄のように関連部隊が近傍に密集しているのは部隊間の往来に都合がよいが、これについてはあくまで便利不便の問題であり考慮する必要はないだろう。地域が都市であるか辺鄙であるかも米国は意に介していない。

 したがって理想としては、ある程度の訓練エリアを確保できる、もしくは訓練エリアへの簡便なアクセスが確保されること、そして、米軍空港もしくは米軍が利用可能な空港へのアクセスがよいこと、これが要件となる。
 このうち、空港については、米軍空港としては青森、東京、神奈川、沖縄など数えるほどしかない。航空自衛隊の基地は、北海道、茨城、埼玉、静岡、愛知、石川、福岡、宮崎にもあり、使用協定を見直す等して、これら基地を念頭において考える必要があるかもしれない。

 次に我が国としての原則としては、
 せっかく移転するならば、それによりメリットをも求めたい。たとえば、基地の存在による地域経済に与える影響、また国庫からの各種支援、保障予算による経済効果が、どうせなら少しでも大きいと思われる地域がよいだろう。
 国際交流にある程度の関心と熱意があるところも考えられるかもしれない。

 何にせよ候補地を選定した後は、当該自治体との交渉が難しいものとなるだろうが、「負担の分かち合い」という道義的な話よりも、それによるメリット・デメリットをしっかりと説明すべきだろう。(当該地域に対してだけでなく、広く世論に対しても)

 まず、一般に不利点と考えられていることについてだが、
  1.  米軍有事における巻き添えの危険
     これは、荒唐無稽な話ではなく確かに現実的な問題となり得るが、誠心誠意説明するしかない。誠心誠意とは判断材料を隠さず提示して詳細に説明することだが、ちなみに、有事において敵国から攻撃を加えられるのは航空基地のような戦力発揮基盤であって、たとえば海兵隊のような部隊(「キャンプ」と称している通り、基地ではなく駐屯地)が大きな攻撃を加えられることは通常考えにくい。
  2.  航空事故等の危険
     想定されるのはヘリコプターによるものだが、本来さほど可能性の高いものではないとは言え、現に国内でも一度ならず起こっており、事故防止に関する政府の米軍への取り組み等を合わせ説明するしかない。
  3.  米軍に対するテロ攻撃巻き添えの危険
     テロは心理的攻撃であって、心理的効果の少ない対象を攻撃しない。軍に関してならばより中枢的もしくは象徴的な基地、施設が攻撃対象となり得るが、同時にこうした基地は警備も厳重であり、今日では主対象から外れている。また、仮に攻撃があっても、明確に基地敷地内を対象としたものとなり、周辺への被害拡大ということは例も考えにくい。
     また、軍でなく国民に対してのテロについても、国民の心理を攻撃するため、繁華な場所、象徴的な場所を攻撃するものであって、ただ小さな軍駐屯地が所在するという理由だけで当該地域を攻撃するものではない。また逆をいえば、一定の郊外や田舎においては、むしろ米軍が存在することによりそうしたテロ分子の接近統制が図れるとも考えられる。
  4.  米兵による犯罪、治安低下の危険性
     沖縄に関する過去幾多の報道でこうした懸念がされることが多いが、現実的には、治安がよい場所では心配はいらない。これもデータを示して説明すべきだろう。
     米兵がいるのは沖縄だけではなく、北は青森から東京、神奈川もだが、こうした地域で沖縄ほどに問題になっていないのはそうした理由によると思われる。沖縄は、問題となった婦女暴行も含め、日本人による犯罪自体が多く、また青少年の深夜徘徊など土地柄に起因する治安の低さもあり、他のどの地域においても同程度に問題が起こるとは言えない。
     また近年の米軍の取り組みによって、沖縄においてもこうした問題は一掃されつつある。
 次に利点についてだが、国家安全保障への寄与の自負ということを除けば、最大のものは、経済的恩恵だろう。
 移転してくる部隊の規模は小さいとしても、たとえば僻地においては、2〜3百人程度の自衛隊部隊の存在でさえ、その町村をきわめて経済的に余裕のある地域としている。多くは政府による補償金であるが、それに加え、隊員による飲食業をはじめとする地域経済への寄与も無視できない。米軍については、現地人の雇用もある程度ある。
 その他、多少些細ではあるが、米軍は駐屯地との交流にも熱心である。各種のイベントをはじめ、こうした交流を大いに役立てることもできる。青森県の三沢などは小さな市であるが、米軍家族による英会話レッスン(安い!)の潤沢供給振りは凄い。(多くの米軍主婦が家庭教師的にレッスンをしている)

 さて、とはいえ、しかし、現実には全く新規に受け入れ可能な移転先を見つけることは難しいかもしれない。
 個人的に、その際には、現在自衛隊部隊が存在する自治体を軸に考えることを提案したい。幸いにも、移転するのは嘉手納基地のような大部隊ではなく、海兵隊のキャンプなどである。陸上自衛隊の演習場あるいは駐屯地、また航空自衛隊基地等への移転(多少敷地拡充の必要はあるかもしれないが)も可能だ。
 当初からこれを前面に押し出す必要はないが、少なくとも並行して研究しておく価値はあると思う。

 いずれにせよ、推移を注視したいが、政府に対してはとにかく、論理的合理的な選定を行うこと、十分な説明責任を果たすこと、を求めたい。その逆、場当たり的処理と、説明不足は今日の政府の慢性病のようになってしまっている。

 また、打診を受けた地方自治体には、国家という共同体の一員としての自負をみせてほしい。リスクを負って、他が尻込みするそうした重大な役割を果たすことに、多少の矜持をもってもよいのではないか、とも思うが、そこまでは求められないか… ^^;)

 私は、「沖縄の負担を分かち合う」という表現が好きではない。
 これは、日本の負担なのだ。
 日本の負担を、屈辱を、分かち合うのだ。

(ちなみに私は、長期的には我が国への米軍駐留廃止を志向する立場である。例により、私が行う構想とは別に、今回は、目下当座の問題として考えてみた ^^)
cover


posted by Shu UETA at 12:56| Comment(3) | TrackBack(0) | 天下-安全保障・外交 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
いつも記事を拝見しております。

上の不利点として、『日常的な騒音被害』が抜けていると思われます。
私は厚木基地の近くに住んでいますが、周辺一帯は二重窓の建物で、それでも騒音には悩まされています。
夜間の訓練(NLP)の時などは特に、夜中2時などに飛ぶこともあるので、気が狂いそうになります。

今回移転の対象になっている部隊がどのようなものか知りませんが、飛行機など騒音を発生させる部隊の受け入れは、受け入れ先の住民にとっては非常に苦痛である、ということを認識していただきたいと思います。
Posted by at 2004年10月04日 01:27
 コメントありがとうございます。

 確かに!おっしゃる通り、その点は抜けていましたね。^^;)

 現在の沖縄のように、どこかがそれを甘受しなければならないとすると、完全解決には、米軍(自衛隊も)の全廃しかないと思います。
 国家の選択として全廃を採らない場合に関しては、やはり沖縄だけでなく日本全体で分かち合うのも妥当ではなかろうか、と思います。

 ちなみに、本文に照らし仮に現実問題としての「説得材料」的な見方をすれば、今回移転の対象として考えられる部隊については、騒音はあまり気にする必要はないと思われます。
 (どの程度を問題とするかは個人差があるものの)私としては、耐え難いのはやはりジェット航空機、中でも戦闘機は凄まじいですからね、基地周辺に限らず航路下地域を含めて。^^;)
 ヘリはまあ耐え得る範囲か…と個人的には感じていますが、かく言う私の住まいは、軍でも自衛隊でもなく、民間のヘリが毎日うるさいです。^^;)
 私も含め、住民は全くこれを問題にしていませんが、思うに、もしこれが米軍や自衛隊なら、大いに運動が起こるような気がします。要は、その存在に対する理解、コンセンサスの差でしょうか。米軍駐留に対するコンセンサスが十分でないことも、一つの大きな問題なのでしょう。そしてそれは政府の説明能力における責任でもあります。
 (私自身、米軍駐留に反対する立場なくらいですから ^^;) 当座の現実問題として理解していますが)

 今後とも、宜しくご意見などお聞かせいただければ幸いです。
 せっかくですので、何か適当なお名前などでコメントいただけると、多少の親近感もあり楽しいかなと思います。^^)
Posted by Shu UETA at 2004年10月04日 10:32
 追記

 厚木については、従兄弟が付近に居住しているため、よく知っています。

 また、過去10年で大半は航空基地近傍に私自身住んでいましたが、その経験からすると、厚木に関しては運用態勢の点で、一般的な米軍、自衛隊基地と比べても騒音被害の程度は他を圧していますね。

 私の感覚では、厚木のようなケースでは、米軍駐留に関する理解という次元を越えて、具体的な解決法を模索する必要があると思います。
 (いろいろ案は検討されていますが)
 私自身、今後もよく考えてみたいと思います。
Posted by Shu UETA at 2004年10月04日 10:42
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。