ソニーの抜本改革が日経で報道されている。
ソニー、金融事業売却へ・本業再生へ抜本改革
(関連)
ソニーの金融事業とは
「ソニー神話」の落日
上記報道にある通り、骨子は、金融部門の撤退、エレクトロニクス部門再建というものだが、果たして英断となるかは未知としても、実に果断ではある。
今後のソニーに注目したい。
僕にとってソニーという企業は、戦略/戦術上の研究においてビジネス上の事例を常にふんだんに提供してくれた企業であり、これまで何度もモデルケースとして使わせてもらった。
印象では、過去の幾度もの危機をその都度、優れた戦略眼戦術眼で切り抜けてきた企業との感覚があるが、今年からは文字通りに全く別の遺伝子をリーダーに迎えており、果たしてソニーの戦略体質はどうなっていくか興味の尽きないところだった。
今回の改革方針というのは、各界を十分に驚かせているのではないだろうか。
大きくは、まず金融部門からの撤退ということ。
誰でも知っているとおり、いまソニーで儲かっているのは、この金融部門だったのだ。
多角化の結果が経営の不健全化につながり、再度スリムアップを図るということはよくあることだが、優等生部門を捨てるということはひとつの果断だ。
(もっとも、優等生部門であるからこそ高く売却できるのであって、そうした感覚は西欧経営者、あるいは今日的経営者にはむしろ自然な発想でもあろうけれど)
しかしいずれにせよ、僕自身はこの方針には大いに賛成だ。
部門規模を考慮するまでもなく、いわゆる本業の土台を損なってしまってはいずれ衰亡する。
一方で、開発部門においてあまりに集中化を図ることについては、心配でもある。
報道によると、例えばテレビに関しては今後は薄型液晶テレビに資源を集中するということであり、テレビ分野ではこれを善しとしても、他においても例えばロボット開発からは手を引くということも言われている。
そうした開発分野の限定集中がどこまでなされるのか不明だが、こうしたことは、もはや後戻りできない(技術水準を維持できない)ということで、技術力開発力において総合力、基礎体力を低下させざるを得ない場合もある。
冒頭紹介の関連記事でも、「同社は液晶やプラズマといった薄型テレビの開発で出遅れ、成長市場をつかみ損ねた」ということが例えば書かれているが、こうした出遅れ、あるいは先駆けということは、相当に事前の段階での戦略判断によって左右されることが多く、巨船の転舵よろしく、いざとなって短期間で機敏に転針できるものではない。
しかしそうした機敏さ、つまり順応性というものは、平素の一見最前線ではないような各種技術の蓄積の有無によって左右されるものであり、安易な切り捨ては、当座の短期的視野に基づいて行われてしまえば、より将来において選択肢を非常に狭めるおそれもあるし、総合的基礎体力の低下にもつながりかねない。
しかも薄型テレビ分野とは、ソニーが優位を保つべく資源集中するという分野ではなく、逆に既に大いに後塵を拝している分野なのであって、長所の伸展ではなく、短所の補いという色も濃い。決して業界をリードしていくという分野ではない。
もっとも、彼ら経営陣はプロ中のプロ、このようなことなど百も承知であろうし、そのうえで期するところがあるのだろう。
お手並みを期待して注目していきたい。
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