省庁横断的政策に関する総務省の統一性・総合性確保評価を別件の調べ事で訪ねていたところ、そこで留学生の受入れ推進施策に関する政策評価を見かけ、ざっと読んでみた。
これは昨年1月発表のものだが、まだ評価結果反映状況は報告されていないようだ。
概要、要旨、資料等各種の報告書が掲載されているが、まずは「概要」がわかりやすくまとまっているので、興味のある向きは、それを見てから適宜各種資料を精読してみるのがよいのではと思う。
この評価調査が前提にしている枠組内においては概ね妥当な結論意見に至っているとは思うものの、個人的には、いくつか思うところもあった。
調査対象留学生は、現在の在日留学生及び修了者(在日及び帰国)であるが、私費留学生については、そもそも留学先を日本としていない海外学生に対する調査を加えるべきだと僕は思う。
つまり、日本ではなく例えば米英仏独豪等に留学している、あるいは留学した人々について、当該国を選んだ理由等を調査したいということだ。
例えばある商品について調査する際に、当該商品を購入した消費者の使用感等感想を調査するだけで、他社同等製品を選択した消費者の意見を考慮しないのは、いかにも不十分だ。
次に、政策の努力方向において、ある種の偏りが見られるのではないかということ。
目的としては3点が掲げられるわけだが、
1 我が国と諸外国相互の教育、研究水準を高める
2 国際理解、国際協調の精神の醸成、推進に寄与
3 開発途上国の場合にはその人材養成に協力
このうち、3及び2的な色合いが、意図的であるかどうかはともかく少なくとも結果的に色濃くなっているのではないか。
一例とすれば特に「研究水準」ということでは、わが国自身の空洞化的な危機感も夙に懸念されているところだが、
例えば留学生の出身国でいうと、中・韓・タイ・インドネシア・ベトナムで90%近くを占め(※)、続くのもバングラデシュやモンゴルであり、ちなみに米国は3%前後である。
(※ なぜか「概要」では5カ国で50%と記述されているが、資料3-3-3によれば90%近くとなっている)
日本への留学生が主にアジア域内の学生になるのは地理的にも、また地域における経済関係的にも当然ではあるが、であればこそ、アジア域外の高度先進国からの留学生の流入ということにはある種の意図的努力が向けられるべきではないかと思う。
そこでは、現在調査されている以上に、さまざまな留学生受入上、留学生活環境、魅力上の諸問題が出てくるものと思われる。
これは本政策評価の前提とするところか否か微妙なところではあるが、現に目的として第一に1項があげられていること、また例えば科学技術政策等も当然視野に入れた横断評価であるべきこと等から、政策努力の合目的性も評価されてしかるべきかとは思う。
次に、留学生の修了後の国内雇用等についてだが、
これは、報告書にあるとおりの方向における施策ももっともとして、さらにわが国としては、企業等雇用ということよりも、学内残留という方向での間口拡大、魅力向上、負担軽減ということを考えるべきではないかと思う。
ちなみに、
留学生問題とは別に、国民の学問環境及び生涯教育性から、僕は大学制度、環境の改革改善をさまざま検討しているが、
例えばキャンパス内の居住区画整備(教員の居住する住宅、マンション、学生アパート、及びそれに付随する各種生活施設)や、卒業後の生涯在籍制度(クラブ会員的、図書館他施設等の利用権、聴講、ゼミ参加、編入制度等)は、留学生にとっても非常に魅力的なものとなるだろうと考えている。
【関連する記事】