2005年08月21日

衆院選雑感(2)


 解散時にも雑感をものしたが、あの頃に比べ、状況の推移を見ると、僕などが想像したよりもはるかに自民党は有利に戦いを進めているように見受ける。(善哉 ^^)
 不退転の方針堅持による、文字通り「戦線の主導性確保」が目下のところ功を奏しているようだ。

 かく自民党が主導しつつある「戦線」とは、ご承知のとおり、「郵政改革」を旗とした「改革路線」、とりわけ、与野党を問わず噴出する反対派の中で奮闘する小泉首相のイメージだ。

 造反派に対しては、僕の想像を超えてきわめて迅速に著名対立候補を立てることができた(その人選には少なからず不満もあるが、闘争的にはやむを得ないか…)し、何人かの反対派出馬断念も出た。
 自民党、内閣ともに支持率は向上傾向。
 今回は投票率が高くなれば、その積み増し浮動票は、むしろ小泉陣営に有利に働く可能性も高い。

 民主党は、いまひとつ自ら戦線(論点)を構築し得ていない。
 「国民新党」、「日本」は問題外。


 まず、その問題外というところをさきに済ませておくと、
 「国民新党」並びに「日本」とやら、
 かつてこれほどまでに理念ということからほど遠い立党を僕は知らない。^^;)
 もとより面の皮の厚い人物たちの手によるものだが、あれほどリアルタイムで困窮と苦肉の策振りが報道されていながら、滔々と急ごしらえの理念らしきものを謳う神経にはある意味実に恐れ入る。
 しかも、僕などの感慨ではむしろもっとも「国民」などということから遠いイメージの巨頭がそろって、「国民」などというのを聞くと鳥肌が立つ心地すらする。
 また、かような集団が「日本」を名乗るなど、実に傍ら痛い。

 彼らは果たしてそうしたシラケたムードを考慮しているのだろうか。
 作戦としてもいかにも拙いように思えるのだが。
 自民党を愛している、自分たちほど愛している者はいないと訴えていたのだから、ここはむしろ率直にストレートに、選挙戦における政党のメリットを享受すべく、亡命政府的立党だとしたほうが余程わかりやすく、まだしも有権者の納得につながったのではないかと思う。あくまで我々こそが本来の「自民党」なのだ、と。
 政党の器さえできれば、ポスター枚数であれ政見放送であれ、そうした利点を享受できることに変わりはない。
 おそらく判断の失敗に数えられることになるだろう。

 国民新党は、自民執行部を評して暴政だの言論封殺だの過激な言葉を振り回すが、民主システムなればこそ、見解の相違する対立候補者に対して、候補者を立てて選挙戦を戦うのは当然であり、それは野党民主党に対して与党自民党が候補者を立てることが、政権与党による野党の言論封殺などであろうはずがないのと同じことだ。判断を下すのは他でもない有権者なのだし。
 そんなことはそれこそ「国民」の誰もが感じ得るところ。
 ケンカを仕掛けるにしてもあまりにもケンカがヘタだ。
 こういう手合いが政治家として国際外交戦を指導するなど、想像しただけで虚恐ろしい。

 「日本」についても、地方主権、反中央集権ということを訴えているが、反中央集権とまで単純に言い切るとは恐れ入る。
 主権という微妙な概念を、どこまで認識してスローガン化しているのか…


 さて、閑話休題。

 民主の武器は「政権交代」というテーマでの閉塞打破感に尽きるのだが、目下のところ、そうした戦線形成に至っていないようだ。
 これは、短期的には民主党の何らかの失策によるというよりは、自民党の成功によるところが大きいだろう。
 (長期的視野に立てば、これまで僕も平素指摘してきたように、いかにも野党的言動の積み重ねによるイメージ損耗の蓄積もここにきて効いてきているだろう)

 自民の成功とは、小泉首相の指導のもと、執行部、党が一丸となって、いっさいぶれることなく不退転の方針で造反派に対決し、彼らに対しても野党に対しても、徹底的に郵政改革を前面に戦うことを選択した点だろう。

 以前にも書いたとおり、民主党の批判(小泉首相は郵政選挙に選挙を矮小化している)こそが的はずれであって、そもそも今回の選挙は任期満了ではなく、郵政改革に対して民意を問い直すべく解散されたことによるのであって、であるにも関わらず、現実問題として政権選択選挙というイメージが前面に出てしまうことも予想された。(そしてそうなれば民主党にとっては分が出やすくなる)

 それをそうはさせず、あくまで郵政選挙につなぎ止めているのは、前述のとおり、自民のぶれない姿勢と、誰が見てもわかる小泉首相の不退転なるさまだ。

 むろん、これは目下の現状であって、選挙戦期間の間には情勢はどう展開するか予断はできない。

 さて、民主としてはこれにどう手を打つべきか…
 基本的には、非常に難しいと言わざるを得ない。既にマニフェストも出してしまっている。郵政の対案も出してしまっている。辻説法で日々個々に自民を非難して声を枯らしているが、そんなものは大勢に影響しない。
 あえてあげるとすれば、マスコミの利用、朝日や毎日あたりか…
 さらには立場をかえて民主こそが今回は組織票、労組をはじめとした集票マシンに頼らざるを得ない可能性も。

 件のマニフェストも、ざっと見れば、自民と民主でそうたいした差はない。問題意識ではほぼ共通だ。
 例によって自民の「政権公約」を「マニフェストに価しない」と批判しているが、そもそも自分の考えるマニフェストなるものと相手の提出している「政権公約」を勝手な自分の基準で比較すること自体無理のある話ではある。

 どれほどの有権者がそれらをたんねんに見比べるかは疑問だが、見比べたところで、問題意識のあり方や解決の大方針では両者にさほどの差はない。(このこと自体は、僕は悪いことだとは思わない、二大政党制に移行していくならなおのこと)
 顕著なカラーの違いがあるとすれば、やはり例により、人権・差別・男女といったことと防衛、自衛隊に関することなどだろうか(余談だが、自民の政権公約では、自衛隊について表現が踏み込みすぎではないかと僕ですら思う ^^;) 防衛省はともかく、自衛官に尊敬の念を、は言い過ぎでは)
 この点、マスコミの(それぞれのフィルターを通した)編集による影響が有権者には大きくなるのかもしれない。

 そしてそうしたところで大きな差別化が図れず、かつ政権交代という新味感が土俵となり得ておらず、いま何がものを言っているかというと、それは小泉自民党に対する応援ムードだろう。

 ムード、まさに日本の世論を左右する巨大なもの。

 各種世論調査では、軒並み、自民党支持率も、内閣支持率も向上している。かつは、単に切り口での数字ではなく、そのベクトルが重要だ。つまり、上昇傾向にあるということが選挙戦では大きな意味を持つ。
 解散時に上昇していたのみならず、その解散時からもさらにまた上昇傾向を見せている(読売世論調査)点で、自民党、小泉内閣支持は実際の(時間断面としての)数字よりも力強いものと考えられる。


 僕はこうした傾向を好感しているので、こうしたムードに対して特に言うことはないが、もし、今回の選挙に連立与党が勝利することになれば、文字通り歴史に残る勝利となるだろう。
 歴史に残る、とは、その勝利の規模の話ではなく、その勝利がもつ意義の話だ(規模的にはいかに僅差であれ問題ない)。

 その意義とは、さまざまにあるが、とりわけ注意喚起したいと僕が思うのは、自民が従来得意としてきたいわゆる組織選挙というものの終焉の始まりということだ。
 マクロには集票機関としての各業界機関、ミクロには立候補者の個人的紐帯による後援会組織、これらが威力を喪失していくことになる。

 例えば朝日の「郵政ショック、集票組織に広がる不安 「明日はわが身」」は良い視点の記事だと思う。

 ちなみに、これは自民内だけの話ではなく、さきに少し触れたように、今回ばかりは民主が自民以上に組織票に頼ることになりそうな気配もあり、ここでも今回選挙ではそうした従来的集票マシンの力のほどが問われることになる。

 小泉総裁ならびに執行部は、件の造反派に対して一人残らず対立候補を立てることにしたが、それについて、マスコミが煽るように「刺客」といって政争的雰囲気ばかりを見るのではなく、総裁や幹事長が繰り返し述べているように、「全国のあらゆる有権者が、郵政改革への賛否を選択できるように」ということの民主手続き的価値をも見るべきだ。

 ここで勝利することは、さきの表現によればミクロでの組織集票選挙というものにも一石を投じることになる。


 あくまで雑感なので今日はこの程度に。^^;)


posted by Shu UETA at 20:29| Comment(4) | TrackBack(1) | 天下-その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 ぼくは政治には詳しくありませんが,Shuさんはぼくがなんとなく感じていたことを,言語化し,さらに踏み込んで明確な見解を示してくださるのでありがたいです。

 ぼくは,どの領域でも,「この人のいうことを聞いておけば間違いないだろう」という人を見定めていますが,政治領域でも,その人をみつけた,という感じでしょうか(もちろん良い意味です)。

 誤解をおそれずにいれば,それはおそらく,それは自分が同じ質と量のデータ(資料)を得たときに導き出す結論を提起してくれるという感触のようにも思います。
Posted by たけぞう at 2005年08月21日 23:17
> たけぞうさん

 実にかたじけないお言葉です。
 もちろん、期待は裏切らないつもりですので、ぜひぜひお見守りください。^^)v

 しかしこれも「素手の議論」に通じるところもあるでしょうが、本来は(特に政治などは)、大量の知識無くして判断可能、議論可能なところに良知はあるべきだと思います。
 ことさらこの分野では、知識の量がかえって目をくもらせるということも往々のようで…むろん僕も日々自戒です。^^;)
Posted by Shu at 2005年08月22日 04:29
喧嘩屋小泉の真骨頂と言うべきでしょうか。
ほんの一月前までは民主党政権誕生との予測が多かったのですが、完全に小泉首相が主導権を握りましたね。
民主党がそれを回復するには、小泉さんの更に先を行く、具体的には造反派をスケープゴートに仕立てて徹底的に叩き潰すことでしょうが、選挙後、連立も視野に入れているようでは無理。
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumivideo/2005/08/08kaiken.html
↑の首相演説を聞いて、私は涙を流すほど小泉首相に同意しました。
Posted by standpoint1989 at 2005年08月22日 07:05
> standpoint1989さん

 いや…僕もあれは当日特番でじっくり見ていたのですが、正直、久しぶりに「政治家の話」を聞いた気がしましたよ。
 (映画なんかではよく大統領の国民に向けた演説シーンなんかがありますが、そんな劇中演説にすら遜色なく、切々と国民に訴えかけるものがありました)

 どれほどの国民があの演説を見たかわかりませんが、どんな選挙運動にも優るものだと思います。

 しかも、造反派にせよ民主党にせよ、あそこで総理が問うている問いかけに正面から答え(応え)ている者はありませんね。いったいどちらが話を矮小化しているのか…
 (単に有利不利においても、ちゃんと真っ直ぐにあの問いに答え、考えを述べたほうが有利であろうものですが)
Posted by Shu at 2005年08月22日 16:24
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