2004年09月05日

直接民主制 「自由市場民主制」

 ある他の目的で、John Naisbitt氏の古い著作('94)「Global Paradox」を読んでいて(話題となっていた当時には読んでいなかった^^;)、「a free-market-of-ideas democracy(自由市場民主制)」という氏の概念に、必ずしもpositiveな意味でとは言い切れないが、どうも惹かれて、考えている。


 著者の主張は、ごくありがちな、インターネットをはじめとする今日のIT技術による直接民主制の招来であるが、その中で、冒頭述べた「自由市場民主制」という概念について触れている。

 The situation I think we are moving toward, after our long period of representative democracy, is the ultimate in direct democracy: a free-market-of-ideas democracy where people directly resolve issues by representing themselves and eliminating representatives. It has been working in science for many years. Someone makes a proposition, and then the interested individuals in the scientific community give their input. In other words, the marketplace decides. A free market democracy would look the same. Our elected government would facilitate a free market of ideas and opinions. And then we citizens would have the opportunity to resolve the issues and vote on those matters that directly impact on our lives. (要約英文)

 氏は、自然科学分野を例にとり、ある科学者が何らかの命題を唱え、その命題について他の科学者が正しい、誤っている等、自分の意見を開陳し、そうした自由な意見交換を通じて、当該命題の真偽が決まる、つまり意見交換の自由な「市場」を通じて科学的命題の真偽が決まる、として、IT技術の活用により、これと同様な「自由市場民主主義」を実現すべきと主張し、それが実現されているのは世界広しといえども、彼自身の住むテルライド町(人口1400人)であると誇り、国家もかくあるべしと唱える。

 また、直接民主制を標榜する論者の常として、「今日では、私たち一般庶民が、これまで代議士が占有していた重要な情報の一切を遅滞なく入手できるようになった」と述べ、「これまで人類が間接民主制を取り入れたのは単に、何が起きたのかについての情報が国民に伝わるまでに膨大な時間と手間を要したからに過ぎず、情報技術革命が起きた今、間接民主制は過去の遺物である」と断じている。

 ちなみに私個人は、現状では、直接民主制などには大反対である。
 上記自然科学分野の例は、少なくとも曲がりなりに(実際には優秀な)訓練を受けた科学者間での話であって、それら科学的真実の追究にあたってその意見市場に、何ら自然科学の教養と訓練を受けていない一般の人々誰もが参加するものではない、ということ、同様に、(間接制でさえ)民主主義とは本来、国民が健全賢明であることを前提に理想的となり得るものであると私は考えている。
 また、私自身の経験における実感としても、むしろ今日の国家が意思決定に使用する情報は、いくらIT技術が発達したとはいえ、誰もが自由にアクセスできるという範囲を質・量ともに大きく越えている。
 古代ギリシア都市のいくつかで見られた直接民主制や、著者の住むテルライド町は、その時代と規模の点で、むしろITなどなくとも、政治が扱う懸念事項討議に必要な情報を住民が共有することは容易であったろう。

 と、かくも著者の見解を批判したが、しかしこれらを別として、意見の自由市場システムという概念に強く興味を覚えている。つまり、著者のようにここから直接民主制につなげるのではないが、何らかの次元、プロセスでこうしたものをシステム化することの適否と可能性について考えさせられる。
 つきつめて考えると、こうした「意見の自由市場」というものは、何もあらたまらなくとも、いわゆる「世論形成」であると言えるが、それを、政治の意思決定により近いところでシステム化する等を含んで、何かアンテナにひっかかるというか、未だ形になっていないが、発想のヒントになりそうで、現在ブレーンストーミング中である。

 あまり公言すべきではないのかもしれないが、正直、私は今日言われる民主主義なるもの自体を支持しておらず、いわばポスト民主主義を思索している。実のところ、democracyなどという言葉には虫唾が走るくらいである。(言い過ぎか… ^^;)
 むろんこれは国民の民意を反映すべきでないというのではなく、その民意の汲み取りかた、システムの問題であるが。

 ここ2〜3日、「意見の自由市場」を軸にいろいろ考えているが、未だ考えを公にするほどにまとまっていない。しかしひとつの直観を得ているような微妙な感触があるので、そのうち何らかの形にしたい。
 思索の助けとして、アリストテレスの「政治学」を読み返しながら考えているが、今回で本といえば、こちらはお薦め。
 アリストテレスが考察した時代までに、既に人類の今日までの政治体制は全て出尽くしている。それらを詳密に比較分析している本書は、著者の個々の見解への賛否はともかく、自ら思索する上でのよい叩き台になる。
 こうした分野に興味のある人には一読をお薦めしたい。(翻訳文に些か難があるが、原文で読むわけにもいかず… ^^;)

 「政治学」アリストテレス



posted by Shu UETA at 14:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 天下-vision・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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