2004年09月01日

産経「正論」「事実も重要ポイント欠けば大ウソに」

 本日産経新聞の「正論」欄に渡部昇一氏が寄稿されている、「事実も重要ポイント欠けば大ウソに」、は平素私の片腹痛く思っていることとまさに同じで、大いに人々に読んでもらいたい内容だが、産経「正論」は毎週月曜日分しかネット上に公開されない。よってここにリンクを貼ることができないが、(おそらく著者も不快には思わないだろう範囲で)抜粋紹介してみたい。
 
  •  昭和24年夏、恩師を訪ねた折、どういうきっかけかノモンハン事件の話になった。
  •  「あれは日本軍の大負けさ」との先生の言葉に驚いた。その時まで私は日本軍はノモンハンで負けているとは思っていなかった。
  •  ノモンハン当時、われわれ小学生の間で最も流行していた歌の一つは「空の勇士」であり、なぜ人気があったかといえば、ノモンハンで日本の戦闘機がソ連の戦闘機をばったばったと落しているという報道があったからである。落した敵機を赤い星印にして機体に描く。その赤い星は三十も四十もあった。また著名な画家の絵にも、草原のいたるところで燃え上がっている敵戦車があった。ソ連軍に大勝している日本軍は感激的だった。
  •  小学生のころに見た多くの画報や絵はすべて幻だったのか。その後、五味川純平氏の『ノモンハン』を読んだが、日本陸軍はこんなに弱かったのか、と改めてがっくりした。
  •  それが一変したのは解体後のソ連から出てきた資料記事である。
     ソ連資料によると、ソ連軍の人的損害は2万5千人以上であり、日本軍のそれは1万7千405人だという。ソ連軍は約十倍の勢力で押し寄せたのだから日本軍の奮戦は感激的であり、大勝利と言ってよい。
     また、飛行機の損害はソ連が1673機なのに、日本は179機、戦車はソ連が8百台以上を失ったが、日本は29台。空の奮戦も、いたるところで燃え上がっているソ連戦車の画もウソや幻でなかったのだ。
  •  五味川氏の本や、日本軍の死傷者二万人と書いている教科書も、そこにはウソはない。しかし、ソ連側の損害を書いていないから、全体としては大ウソになっている。個々の事実は本当でも、重大な事実を抜くと、とんでもない大ウソになることが歴史や裁判にはよくある。
  •  たとえば少し前に、NHKの『その時歴史が動いた』で、ハル・ノートを取り上げていた。NHKであるから、個々の事実にはウソはない。しかし、あの番組には超重大な事実が抜けているから、大ウソ番組を日本中の視聴者に届けたことになる。
  •  重大な欠落とは、ハル・ノートがハル国務長官が起草したものでなく、ハリー・ホワイトという財務次官補が執筆したものだということである。
  •  ホワイトはNKGB(KGBの前身)の在米責任者指揮下のソ連のスパイであった。戦後、スパイ容疑で召喚されたが、その三日後にジギタリスの大量服用で死んだ。ソ連側に暗殺されたという説も強い。
     いずれにせよホワイトは、ドイツに敗れかかっているソ連を救うため、日本が絶対、受け入れないと思われる条件を並べ、実質上の国交断絶文書を作ったのだ。
  •  ホワイトの友人には大統領特別補佐官ロークリン・カリーがいて蒋介石の顧問にオーエン・ラチモアを採用させた。二人とも共産党員である。ラチモアが蒋介石に働きかけさせたのである。NHKはこの部分も削ったのであった。
  •  ハル長官は「ハル・ノート」という呼ばれ方を嫌っていたという。
  •  日米開戦についての最も重要な事件の最も重要な事実を抜けば、他の事実はみな当然でも大ウソになるのだ。しかも今述べた上記のことは今や公知のことである。NHKはなぜ隠したのだろう。


 NHKがなぜ隠したのだろう、との問の答は氏もよくよく了解された上での敢えての問いであろう。NHKの、何らかの思想によるとしか思えない意図的な偏向報道は、平素日々のニュース番組にも明らかである。(最近有名なところでは、イラク人質事件の高遠菜穂子氏の帰国後初会見での、「自衛隊を撤退させなかったのは当然だと思います」との発言も、無論NHKではその部分のみカットされていた。)

 このような例は、いくらでもある。
 そして人々は容易に影響をうける。
 たとえば、かつてあれほど政府であると庶民であると、戦争推進派であると反戦派であるとを問わず皆が普通に使用していた「大東亜戦争」という戦争の正式呼称さえも、戦後、GHQがマスコミはじめ国民に強制的に使用を禁止したこと、GHQの言論統制という部分を伏せることによって、今日では、知識階級と言える人間までもが、「大東亜戦争」といえば戦前軍部の悪の思想を表現する呼称であり、そんな用語の使用は思想的に問題があるなどと断じるさまである。このような用語の問題は、些少なことで大きな現実的問題にならないから良いものの、この通り、一定の時間の経過の後には、こうしてちゃんと立派に効果を現す。おそろしいことだ。

 私は、たとえ稚拙なりとも自分でものを考えることを信条にしているから、いわゆる右翼にも左翼にも何ら肩入れすることはないが、唯一、「左翼」であるとか「左派」といわれるグループを憎む点は、情報捏造、改竄を好んで行うことである。
 上記渡部氏の警鐘のような、情報の都合のよい部分の選択などはかわいいもので(この程度ならニュースや新聞記事で日々見られる)、さらに明らかな捏造すら日常茶飯事、例えば全く関係のない写真を部分的に切り抜き、好きなキャプションをつけるまで断行するにさえも良心を咎められる様子がない。
 こうした悪癖は、国内に限らず、「左派」の世界的な特徴であるのが不思議だ(しかも国家レベルで見てもあてはまる)。そうしたことに抵抗を無くす何かが、かの思想源にはあるのだろうか…別に嘘をつくらなくても、普通に正しい情報で論戦できようものだが…
 少なくとも、ことこうした点にかけては、右翼など正々堂々としたものだ。

 こうした大衆洗脳的(あまり好きな言葉ではないが)な策に乗らないためには、国民ひとりひとりが、自分でさまざまな立場の情報にあたり、自分で判断を行うべきであるが、ただ大きい声を信じるのが一般的な人々の常であり、なかなか難しいものだ。
 せめて、知識階級を自認する人々には、本当に、自分で情報にあたり、自分の頭で考えることを願って止まない。そのような立場の人は、不勉強では済まされない。

※ ちなみに、上記例のノモンハン事件に関しては、戦略目標を達成し得ずという点で、作戦が失敗であったことは事実であり、そうした意味では日本軍は敗北したとも言えなくはない。(勝敗と被害数は別)


posted by Shu UETA at 09:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 思索 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なぜ右翼、右派がどうどうとしているか。

次のような見方をしてみました。

前提として、右翼(保守)と左翼(革新)とします。
土俵にたった時点で、大抵の場合、保守は事実に基づく理論武装ができるという点が、革新に比較して有利な点です。革新に対して、事実をつみあげて、そんであんたのその方法はどういう結果になるわけ?その論拠を示しなさい、などと言えば、言われた側はまだやったこともないのにわかるか!ということになるわけです。
そこで、手っ取り早く、そもそもの事実をねじまげてしまう、というのが左翼のとった手法。実際は、Shuさんのおっしゃるとおり、革新側もそいういった手法をとらなくても、国民の支持を得たり自分たちの主張を認めさせたりすることは可能だと思うのですが、スキルが無いのが問題かと。

これは、いわゆる「抵抗勢力」問題も同じ。
Posted by toybox2004 at 2004年09月02日 03:09
> toyboxさん

 なるほど…ざっくり見ると、そういう力学は説得力ありますね。そこで踏ん張って、安易に流れなければよかったのでしょうが、いったん手を染めると、抜けにくいのでしょうね。

 左右とも、立場を同じくする人の中には、一部の人々のことを苦々しく思っている人たちもいるでしょうね。
 もし私が左翼の論客ででもあったなら、ああした手法をとる勢力を、却って主張の足を引っ張る輩としてさぞかし疎ましく思うことでしょう。^^;)
Posted by Shu at 2004年09月03日 14:03
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