2005年07月18日

イイ関係と日米の将来方針


 イラク・イランの接近は一定の関心をもって報道されてはいるが、わが国としても、相当の注視をしていく必要があると思う。

 イラク首相がイラン訪問 イ・イ戦争以来初(朝日)
 イラク首相がイラン訪問 革命後初、情勢安定に寄与(産経)

 こうした報道を待つまでもなく、かねてから駐留米軍の撤退時期をめぐり、イラク政府側は撤退の時期尚早を米に訴えてきていた。
 米国の国際的PR用のコメントと相違して、現実にはイラク国内のゲリラ、テログループはまだまだ跋扈を続けており、またイラク人警察や軍はこれらの集団に対して甘くもあれば通じている部分も大きい。
 このような状況で米軍が立ち退けば、再び国内は相当の混乱に陥る可能性がある、というものだ。
 (こうした認識は正しいと、僕個人は思っている)

 とはいえ、米国内には撤退の声、動きも徐々に高まりを見せていることでもあり(ここ数週間特に顕著だ)、イラクとしては別の手も考えないわけにはいかない。

 そこで当然浮上してくるのが隣国イランだろうという予測は以前から観測されていた。
 むろんかつての仇敵ではあるが、しかしそれはあくまでフセイン政権下での話、新政府にとって手打ちは難しいことではない。
 しかも、イラク政府で勢力をほこっているのはイスラム教シーア派だが、言うまでもなく、イランはシーア派国家(国教)だ。

 そこで隣国イランに一定の支持と支援を政治的にも軍事・治安的にも要請することは、イラク政府の利に合う。
 またイラクとしても、反米的進路に照らすと、隣国にして大国のイラクが米の傀儡のような状態でいることは全く国益に反するのであり、イラクを自方に引きつけたいのは無論のことだろう。

 さて、しかし話はここで止まるのではなく、単に彼の地が必ずしも親米でないイイ関係に陥るのみならず、イランの背後には中露という大旦那がつく(ついている)可能性が高い。ここで米にとって問題はますます悩ましくなるだろう。

 と、他人事ではなく、これは日本にとっても考えどころだ。正確には、考えどころになる以前から状況を注視し、さまざまなオプションを考慮しておく必要があるだろう。

 目下、ユーラシア大陸の東側では、大国間の関係が非常に微妙だ。
 中露が接近を強め、さらにインドをそこに取り込もうとしつつある。本気の度合いは、中国>ロシア>>インドといったところだろうけれど、現状では。
 韓国は「バランサー」などと標榜してはいるが、少なくとも現政権においては、もはや中華体制に復帰しつつある色も濃い。北朝鮮はもとよりだ。
 かつ前述したように、イランと中露の関係は既に相当なレベルにあり得る。

 米国としては、単にイラクを放棄するかどうかということも考えねばならないし、中露イイという軸がアジアを横断することを容認するかどうかということも考えねばならないところだろう。

 イラク駐留の諸国についても、ここから先は上記の問に対する米国の戦略に協力するのか、あるいは自国の国益に立脚するのか、それともあくまで人道的観点から考えるのか、そこが熟慮されるだろう。

 最後の可能性は度外視するとして(既にさほどの激甚な人道問題のレベルではない)、残りの前者と後者だが、後者において、つまり自国の利益ということを考えれば、イラクとの関係は、それが親米イラクとの間のものであろうと中露イイのイラクであろうと問題はないともいえ、また米に付き合う限り際限のない(と今のところ思える)テロ標的であり続けるリスクは大きい。そこで天秤にかけられるのは、米の支援を続け米と親密であることのメリットとの間においてだろう。(僕個人の考えでは、多くの国々について、そうしたメリットはあまり大きくないのではないかと思える。であれば、新政府正規発足をもって撤退というのが順当となる。)
 もっとも、イランの核問題という観点から、欧州諸国にも別の思索も必要になるが。

 さて日本については、まず上述の天秤においては、他の諸国にくらべ、米を支援し米と親密であるメリットというものは大きい傾向にはある。
 しかしそれは無論現状においてであるが、一方で、米国のアジア戦略をにらみつつ、米がこの地域から一定程度関与を縮小するという可能性をも想定しておく必要もあるだろう。その意味では(今日は詳述しないが)まずインドをこちらに残しておきたいということがひとつ、仮に反米イイが出現しても、米とともに疎外されるのではなく一定の関係を築いておく、少なくとも間に立つことができる程度には関係をつくっておくこと、さらには東南アジア諸国をよく取りまとめておくことが必要だろう。
 こうした、米が多少距離をとるというオプションを選択した場合には、米が日本の野望と不安視しない範囲で、例えば「肩代わり」「分担」的な説明で、アジアはまかせてくれということを言うべきかもしれない。


 そうしたさまざまな今後の展開に影響を考慮しつつ、そろそろ駐留延長の是非と可否が検討されはじめた。

 陸自派遣延長にらみ日米が協議開始 安保理決議解釈で(朝日)

 僕は、ここはまずスジを通すことを重視すべきと思う。
 国内世論はもとより、国際世論においても、この問題は当初から(開戦時から)さまざまに「わかりにくさ」「あやしさ」がつきまとっている。そういう世論下においては、明快さということがいちばんの薬だ。

 ここでの「わかりやすい」「明快な」スジのひとつとしては、やはりイラク新国家が正規に発足した時点で現在の活動は終焉となるということだと思う。
 その後は、あらためて正規にイラク政府から要請があれば、そこで要請に基づく活動が検討されるべきだ。

 つまり、上記記事にあるような、米のあげるオプションのひとつ、「イラク政府から治安維持要望がある以上、未だ移行プロセスは終了していないと解釈できる」といったものは(その解釈が成り立たないとは思わないが)現状では避けるべきではないかと思う。

 とはいえ、空白期間によってイラクの混乱化が起きてはならない。そこで(もし撤退ではなく駐留延期とするならば)、あとは運用上の問題で、現在の活動から、新たにイラク政府から要請されて行う活動の間を継ぎ目なくスムーズにする方向で考えるべきではないだろうか。(これも詳述はしないが、可能だと思う。協議も文書作成もあらかじめ準備しておき得るし、例えば部隊の撤収を時間をかけて行うことで事実上存在し続けることだってできる)

 もっとも、日本の支援内容については、空白期間ができようがイラクの治安、混乱とは無関係であるので、日本については堂々といったん引き上げても問題ない(というか、そうあるべきかと思う)。その上で、イラク政府と新規に調整すればよい。

 この場合、もし引き上げ後に正規の要請と応諾に立脚して再度派遣される場合は、予算上の無駄が出るのは当然だが、しかし、ことこの問題に関しては、国民にも世界にもわかりやすいスジを通すことのほうが肝要と僕は見ている。

 これは国民の納得という「スジ」においてもそうであるし、現状のような、いかにイラク支援とはいっても、しょせん米国作戦の一員との状況をいったん形式的には打ち切ることになり(実質上はどうであれ)、多少卑怯な観点ではあるがテロ組織側の敵視を軽減することもあり得る。
 (もっともこの場合でも、やはり現地情報収集や、米軍との交換幹部といった名目で、一定規模の要員を残置しておくことはできる。ただ僕自身は、再度派遣するにしてもそれはそれでイラク政府と新たに支援内容を再検討すべきだと思っているが)

 ただし日米が上記のような道を選んだ場合、さらにその前に書いたような状況から、他の諸国が大いに抜け落ちることは間違いない。それ故に米国も踏み切れないのだろうが…米国は包括的なメリットを提案して説得するしかないだろう。

 日本としては、米国の出方とイラク政府の模索とを両睨みで、さまざまなオプションを研究しておく必要がある。


posted by Shu UETA at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 天下-安全保障・外交 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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