2005年07月13日

三洋電機「世界本社」計画


 昨日の報道によると、三洋電機が折からの経営再建計画の目玉として、「世界本社」計画なるものを構想しているとのこと。
 三洋、本社機能を分散 海外も視野 「大阪」は縮小へ(産経)など

 報道の注目点のひとつとしては、近年、企業の脱大阪傾向で関西地盤沈下が懸念されているところ、大阪所在の三洋の事実上の本社縮小による追い打ちについてだが、個人的には、そんなことよりも、この計画についての経営陣のコメントが妙に引っかかった。

 詳細も内情も知るところではなく、単に報道記事から受けた印象に過ぎないのだが、簡単に少し書いてみたい。

 「世界本社」と日本語にしてしまうと妙におかしく、意味がわかりにくいのだが、それは「global」という言葉の訳しにくさに由来するもので、多くの場合にそうであるように、本来であればいっそglobalは「グローバル」と言うほうが適切にニュアンスが伝わるものではある。

 ここで三洋電機が掲げる構想も、趣旨は、本社機能のグローバル分散化といったところであって、報道に対しては、「世界本社(Global Headquarters)」と表現されている。

 上記産経記事によると、概要は次のようだ。

 
  •  三洋電機は、大阪府守口市にある本社機能を今後3年間で分散し、一部部門を東京や海外を含む他都市へ移す方針を明らかにした。
     本社機能が一カ所に集中するより、「情報収集しやすい場所に分散する方がそれぞれの機能は強化できる」(幹部)と判断した。
     世界各国に本社を置く「多国籍企業」はあるが、三洋の試みは異例。
     分散が進めば、大阪にある本社は縮小を余儀なくされそうだ。

  •  三洋はこの計画を「世界本社(Global Headquarters)」と命名。
     営業やブランド戦略、IR部門など、現在大阪本社ビルを拠点としている部門を分散し、それぞれ情報収集しやすい都市に移す構想で、井植敏雅社長兼COOは「大阪にすべての本社機能を集中する必要性はないという意思表示」としている。

  •  野中ともよ会長兼CEOは「売上高の半分は海外なのに、守口に行かないと、どこで何が行われているか分からず、真のグローバル企業とはいえない」と説明、機能移転候補地として海外諸都市が浮上していることも示唆。

  •  昨年5月には、中国市場の開拓のため大連で取締役会を開催したが、こうした考え方を一歩進め、「新鮮な情報を最もコントロールしやすい」(井植社長)態勢により、業績回復と真のグローバル企業への転換を目指す。

  •  17年3月期に1715億円の赤字に陥った三洋は、今月5日に経営再建計画を発表、世界本社の設立はその中核になる。

  •  野中会長と井植社長は産経新聞のインタビューで、国内工場の2割を閉鎖、社員15%を削減する経営再建計画について「不退転の覚悟で進める」と決意を語った。



 結論からいうと、僕の考えでは、この報道から受ける印象の限り、おそらく三洋電機はたいした成果をあげ得まい。工場閉鎖、社員削減等のスリム化で一時的に改善を見せても(そしてあるいはそれで十分に財務改善がなされたとしても)それ以上の躍進にはつながるまい。株で言うなら短期中期までで、長期的展望はすべきでないかも。

 もっともこれは財務諸表の観察によるものではなく、単に経営トップ陣のコメント振りから受ける印象によって感じられる空気から思うことに過ぎないのだけれども。
 故に当然的はずれである可能性は高いし、また、(一般的に難しくはあるが)トップの戦略的慧眼が無くとも、各部署、社員の能力によってそれを補うこともまたあり得る。


 そもそも「世界本社」「Global Headquarters」についてだが、その発想自体は悪いものではないし、それだけを聞けば今日の新しい組織論に合致するともいえるくらいだ。
 僕も、ふむなるほど、と思ったものだ。

 ところが会長や社長のコメントを見ると、どうも違和感がある(あるいは記事になる段階で記者の表現が拙くなった可能性もあるが)

 たとえば、会長の野中ともよ氏はこう言っている。
 「売上高の半分は海外なのに、守口に行かないと、どこで何が行われているか分からず、真のグローバル企業とはいえない」

 まず、今時の組織システムにおいて、「守口(本社)に行かないと、どこで何が行われているか分からず」とは、一瞬目を疑うようなコメントだ。もしこれが三洋電機の実態として事実であるとすれば、組織、システムは相当に旧時代的な状態にあることが予想される。
 仮にそれは良いとしても、もしそうした状況にあるのであれば、各部門を分散させたところでそれはかえって意思疎通性を低下させ、「ある事については、ある場所に行かねば何が行われいるか分からず」となって、エネルギーの多大なムダを生じさせるはずだ。

 理論的には、そのような分散をしても良いのは、分散していなくてもある程度ホロニックなシステム系統が整備されている組織だ。(今日、もとよりそうあるべきだが)
 本部に行かねば状況が何も分からないなどという組織が本部を分散すれば、それは悪しき不統一と意思疎通コストの増大を招くことになりかねない。

 これも論理的に、そのような観点で多少の分散を行ったところで、分散された各箇所において自分のところで掌握できる部分が今より増えるだけで(分担だから)、結局はそれぞれの職掌がそれぞれの職掌箇所に行かねばわからないことになるのであって、それならばせめて本社一カ所に行くだけで何でもわかる方が余程ましというものだ。

 本社機能の分散化ということ自体には他のさまざまなメリットがあるが、しかしそれは、「いちいち本社に行かないと情報が得られない」から行う、などというものではない。

 続いて、本社に行かないと何もわからないようでは「真のグローバル企業ではない」と彼女は言っているが、「グローバル企業」というあり方は、企業の目的ではなく手段だ。
 利潤の最大化という目的のために、今日の経営環境考慮の結果、多くの大企業でグローバル企業化が選択されてきているのであって、グローバル企業になりたいためにグローバルな分散展開をするということではない。
 コメントの論法では、現状ではグローバル企業とは言えないから、本社機能を海外にも分散配置すればグローバル企業らしくなる、と言っているようなものだ。

 もっとも、天下の三洋電機、こんなことは幹部陣は理解しているのだろうが、上記のような会長社長のこうした発言を見る限り、少なくとも会長たちには実のところ改革の本質がピンときていない可能性はあるかもしれない。
 多分に揚げ足取りのような難癖にも近い面もあるが、しかし、本質に対する理解の程度というものは、ちょっとした短い言葉の中にも現れるものだ。

 あるいは、より悪いケースとしては、ピンときていないのではなく、上記指摘のような的はずれな認識を、彼女らが実際に信念している可能性もあるが…考えにくくはある。

 もしこの構想が真に意義あるものとなるためには、二つの可能性があるだろう。

 一つは、そもそも重点は本社機能の分散云々ではなく、それよりも、ネットワークを基盤に、情報システム、権限・意思決定システム等を含めた経営システムの今日化整備こそが目玉であるべきだろう。それを踏まえた結果として選択可能となった本社分散化を併せて行うということだ。
 (実際、現実には社はこれを構想している可能性が高いように思うが、その場合には報道に対するアピール重点が的はずれだ)

 もう一つは、社内分社化にも近いような、各部門の相当レベルの自律性を目指すというもの。
 しかし、事業部のようなものならともかく、こと本社機能(Headquartersというとおりまさに司令部機能)について、相互間の疎通、統制ということが度外視できるはずもなく、いずれにせよ前項目の施策を踏まえない限り、この線は難しいように思う。


 経営トップの状況認識力、あるいは単に表現力の問題か、いずれにせよ、こと再建活動において最も重要な経営指揮陣の様子から、おそらくはたいしたことはできまいて、などと想像してしまう次第だ。^^;)

 以前古くは、僕は個人的には三洋電機経営にはわりと好感をもっていたものだが、今の経営構想からすると、工場閉鎖と人員削減、中国市場への必死振り、そして今回のような印象と、(あくまで僕にとっては)何らの独創もなければ(にも関わらずそれを気取っている点でなお悪い)現状見るべき点はない。

 産経新聞の紙面記事ではさらに、「リストラに聖域なし」「環境やグローバルエナジーを打ち出して社会意識との距離を縮める」と抱負しているが、いずれも実に今さらだ。せっかくの取材に対してトップが今さら得々と語るようなことではない。(PR戦略の一環としての自覚に乏しい)


 どうも批判に傾いて気分の悪い記事になってしまったが、僕の心情としては非難悪態ではなく、本来有為のわが国一流企業のひとつに対する「心配」だ。
 (もっとも、先に書いたように、あくまで報道上の断片情報によるものに過ぎず、単に僕の的はずれ、勘違いということであれば、いかに僕は赤っ恥ではあっても ^^;) それに越したことはない ^^)


posted by Shu UETA at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 天下-経済・エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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