2004年08月17日

(読書)「実録 田中角栄と鉄の軍団」

 「実録 田中角栄と鉄の軍団」上中下巻、読み了わりました。
 感想としては、なかなか良い本。

 タイトルの通り、田中角栄を事実上の主人公に据えながら、自民党田中派と、田中の薫陶を受けた代議士たちの奮闘を描いたドキュメント。
 昔「小説吉田学校」という好著があったが、それの「田中学校」版といった感じ。ただ、小説吉田学校は「小説」というだけあって、一応のストーリー性があったが、本書は、個々の主要な政局や人物を切り出し、かつ非常に端的に描くので、ややぶつ切りの感はある。
 代議士たちの奮闘、と書いたが、基本的には大部分、政局における話がメインである。

 本書のメリットとは、まず、吉田内閣から細川内閣直前くらいまでを、まとめて概観することができる点、
 そして、派閥力学や政局感覚をある程度知り得ること、
 また、代議士たちのメンタリティに触れることができること、等である。

 作者(大下英治氏)は冒頭にこう記している
 本作品を書くにあたり、竹下登、金丸信ら田中派の大幹部をはじめ、橋本龍太郎、小沢一郎、羽田孜ら本作品に登場した「鉄の軍団」のメンバーに会い、生の声をとっている。「実録」とつけたのは、そのためである。

 読みやすさとしては、ひとつひとつのトピックスが短く端的に描かれている点がよい。また、登場人物ごとに、初見の際に簡単な経歴、選挙出馬に至った動機、選挙の様子が紹介され、人物像も端的にわかりやすく描かれる。

 読みにくさとしては、主要トピックス、それも政局がメインであるため、トピックスとトピックスの間の流れがわかりにくく、また時間的に話が前後することもある。

 メリットとして書いたとおり、戦後政局の概観には打って付けと思う。

cover cover cover
「実録 田中角栄と鉄の軍団」講談社プラスアルファ文庫
上巻 奇跡の天下取り
中巻 「角影」政権
下巻 角栄は死なず

 さて、本の良否は別として、その政局概観のおさらいをしてみて個人的につくづく感じたのは矢張り、(少なくとも日本の)議会民主制の限界と醜さである。
 概ね、政治家はそのエネルギーの7〜9割を政局と選挙に注いでいる(注がざるを得ない)ように見える。田中角栄などは言わば超人の部類であり政治そのものにも相当のエネルギーが向かうが、ひどい代議士だと、おそらく全精力が政局に注がれているだろう。
 私は、民主主義システムという「勝者による戦果山分けシステム」を支持していないが、特にわが国においては、実に、それを絵に描いたような状態だ。
 しかしながら、それは個々の政治家の問題ではなく、システムの問題であるから、システムに適応しているだけの彼らを責めることはできない。
 またいずれにせよ、これを改革するには、この現行システム内で力を得る必要があるわけで、これに適応し、勝ち抜くだけの能力を身につけねばならない、気は重くとも ^^;)


posted by Shu UETA at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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