2004年08月17日

(名将言行録) 謙信の詩、他

 本日発行の「名将言行録」(第5号)では、北条氏康が好んで和歌を詠み、漢詩を賦したという話がありましたが、武将の詩というものをいくつか紹介したいと思います。

 上杉謙信も漢詩をよくしましたが、これは有名な作で、私も大好きな詩です。(書き下し文で紹介します)

九月十三夜陣中作  上杉謙信

霜は軍営に満ちて秋気(しゅうき)清し
数行の過雁(かがん)月三更(さんこう)
越山(えつざん)併せ(あわせ)得たり能州(のうしゅう)の景
遮莫(さもあらばあれ)家郷遠征(かきょうえんせい)を憶う(おもう)

(霜が陣に満ち、秋の気配がすがすがしい。
雁の列が空を飛び行き、夜中の月が照っている。
越後、越中の山々に、手中にした能州を併せた光景は素晴らしい。
故郷では遠征のことを案じていることだろうが、ままよ、今宵はこの十三夜の月を賞でよう。)


 また、戦国期の武将の和歌(辞世)で私の好きなものをいくつか…

五月雨は 露か涙か 不如帰 我が名をあげよ 雲の上まで
                      足利義輝

限りあらば 吹かねど花は 散るものを 心短き 春の山風
                      蒲生氏郷

夏の夜の 夢路儚き 後の名を 雲井にあげよ 山不如
                      柴田勝家


 戦国武将ではありませんが、幕末の芹沢鴨の歌も好きなもののひとつです。

雪霜に 色よく花のさきがけて 散りても後に 匂う梅が香
                      芹沢鴨

 さて漢詩といえばむろん本場は支那ですが、
 私は曹操の詩が大好きです。素晴らしいものが多いですが、代表的なものをひとつ紹介してみましょう。(書き下し文ですが、さらに少しわかりやすくしてみました)

 短歌行  曹 操

酒に対しては当に歌うべし
人生幾何ぞ
譬えば朝露の如し
去日苦だ多し
慨しては当に以て康すべし
幽思忘れ難し
何を以て憂いを解かん
唯だ杜康(*1)有るのみ
青青たる子の衿(*2)
悠悠たる我が心
但だ君が故が為に
沈吟して今に至る
幼幼として鹿鳴き
野の苹を食う
我に嘉賓有り
瑟を鼓し笙を吹く
明明たること月の如き
何れの時にか採るべき
憂いは中より来たり
断絶す可からず 
陌を越え阡を度り
枉げて用って相存す
契闊談讌して
心に旧恩を念う
月明らかに星稀に
烏鵲南へ飛ぶ
樹を紆ること三匝
何れの枝か依る可き(*3)
山は高きを厭わず
海は深きを厭わず
周公哺を吐きて(*4)
天下心を帰す

(*1)杜康: 初めて酒を作ったとされる。また酒のことをいう。
(*2)青衿: 周の学生服。知識人に呼びかけることば。
(*3)月の明るさで星が稀となり、我が威に群雄が影をひそめたようだ。
(*4)周公吐哺:周公旦が人材登用に熱心のあまり、一回の食事中に三度も、口に入れた食物を吐き出してまで、訪れた人と面接したという故事。

 もう少しわかりやすくしてみましょう。

酒にむかいてまさに歌うべし
人生いくばくぞ
たとえば朝露のごとし
去り行く日のはなはだ多し

熱き情はたかぶるままに
つらき憂いは忘れ難し
何を以て憂いを解かん
ただよき酒あるのみ

青青たるきみが衿
悠悠たる我が心
ただ君が為のゆえに
沈吟して今に至れり

ゆうゆうと鹿は鳴き
野の草を食む
我によき賓有らば
瑟を鼓し笙を吹かん

明明として月のごとし
何れの時にかひろうべし
憂いはこころより来る
絶つべくもなし

陌を越え阡を渡り
ただひたすらに訪ね求めん
杯かわし語り明かさん
心におもうは旧き契りぞ

月明らかに星稀に
烏鵲南に飛ぶ
樹をめぐること三たび
何れの枝に依るべきか

山は高きを厭わず
海は深きを厭わず
周公哺みしものを吐き
天下心を帰せん





 先週、北条氏康は全二回で最終回の予定と書きましたが、もう一週のばし、来週号の第三回で最終回とします。




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posted by Shu UETA at 07:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 名将言行録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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