2004年08月15日

後輩を育成する先輩のけじめ

 昨日、「水曜どうでしょう」という番組のDVDを購入した件を投稿したが、このDVDを見て、後輩を育成する先輩のけじめ、というものについて、いたく考えさせられた。
(くだらないことで、とかく、いたく、考えさせられる質で ^^;)


 さて、話したい気持ちが先立つものの、「水曜どうでしょう」なる番組自体がさほどメジャーでないこともあり、多少概要をお伝えしながら話してみないといけない。

 「水曜どうでしょう」なる番組は、北海道のローカルTV局、HTB北海道テレビの深夜枠バラエティ番組、1996年10月放送開始以来、当初はむろん北海道というローカルエリアでの番組だったが、そのおもしろさが口伝てに広まるにつれ、徐々に放送局を全国に広げ、今年は30都道府県で放送されるまでになった。
 ちなみに多くの地域では、過去の放送分を「どうでしょうリターンズ」として放送している。

 この番組は、北海道のタレント大泉洋と鈴井貴之、それにディレクター2名が、4人で全国(海外もあり)を股にかけ苛酷な旅をする番組である。(まったくの4人。他にスタッフ等も一切同行しない。)
 特にメインキャラの大泉洋の存在感と独特の喋り、さらに彼とチーフディレクター藤村の掛け合いが絶品だ。
 共演の「ミスター」こと鈴井貴之は、基本的に無口で、要所要所で軽いコメントを入れるタイプ、最近はヤラレキャラ的な位置付けにもなりがち。

 僕は数年来のファンではあったが、放送開始当時はまだ仕事で北海道に行くこともなかった時期であり、番組初期の様子は全く知らなかった。
 今回購入したDVDは、その放送開始からの企画3本を収録したものだった。
 見てびっくり。今から比べると驚く程、たいしておもしろくないのだ。
 もちろん、現在は既に彼らのファンなので、ファンとしての目で見るから、それなりに笑えるし、楽しいが、もし最初にこれを見ていたなら、続けて見ることはなかったかもしれない。
 さらには、さきに述べた大泉洋、彼が、ただの素人同然なのである。実際、この頃の彼は現役の大学生だったらしい。
 逆に共演の鈴井は、とてつもないハイテンション、ほとんど彼が話し、番組の流れを方向付けている。

 さてもう一度言うが、この番組は、4人っきりで成り立っている。そして、メインキャラは大泉洋であり、彼の存在とトークが面白さの大部分である。大泉は、「大泉さん」と呼ばれ、また4人の中で圧倒的な存在感をもつ。
 ところが、放送開始期の彼は、おまけのような存在であり、共演者の鈴井貴之が驚くべきハイテンションで番組を引っ張っている。大泉は「大泉君」であり、常に鈴井やディレクターに気をつかい、個性もさほど見られない。

 さて、ここからが本論。
 共演者の鈴井貴之は、この頃すでに多くの出演歴を持ち、また番組の企画にも参加するレベルにあった。年齢も既に30代半ば。
 ディレクター陣は30過ぎ。大泉は22くらい。
 DVDの特典映像、解説でのディレクター2人の回想によると、当時、鈴井貴之は徹底的に大泉を鍛えている。カメラが回っていないところで、「おまえ、コノヤロー」というノリで、叱り、説教していたと。
 そして番組では、たいへんなテンションでトークを引っ張っている。
 ところが、もし一度でも見ればわかるが、鈴井はとてもそんな風に見えるタイプではない。優男で大人しく、無口、ヤラレキャラも板に付いている。大泉にもいいようにいじられている。そして「大泉さん」と普通に呼んでいる。
 しかし、ディレクターの回想にはこうも言う。
 「『鈴井さんは怖い…』それが当時の大泉の口ぐせだった」、と。

 僕は、この鈴井貴之なる人物の偉大さに感じ入った。(むろん二人のディレクターもだが)
 というのも、いったん明確な上下関係ができた後、同じ人間関係の中でそれが変化することがどれほど稀であるか?学生時や入社時の先輩後輩関係でさえ、20年経っても、お互いオッサンになるだけで、そのオッサンたちの間では依然として先輩は先輩として口をきき、後輩は後輩なりだ。
 鈴井は、素人学生の大泉を鍛えた、そして、自分しかいないということで、番組を引っ張った、そして、大泉の成長にしたがって徐々にメインを彼に譲りゆきながら、現在は、先輩でも師匠でもなく、同等の(見ようによってはそれ以下にも見えることもある)共演者として接している。大泉さん、と呼んでいる。大人として扱っている。

 僕は、こうした鈴井氏のやりように、いたく感じ入る。かくありたい。
 買いかぶりも多少あるだろうが、僕は大いに買いかぶる。自分のためにはその方がよいから。
 親子関係でさえ、親はいつまでも子供を子供扱いするものだ。先輩は後輩の後輩扱いをやめ得ないものだ。職場での職位が逆転しても、ともすると先輩風を吹かせる者も少なくはない。が、子はいつまでも子供ではない、後輩もいつまでも新入りではない。知識でも見識でも大いに先達を凌駕することも多い、そうでなくとも専門分野においては一家言も持つ。
 往時武家においては、家督を譲れば親といえども、家督たる子の扱いを疎かにしない。家康は秀忠を秀忠殿と、あるいは将軍家と呼び、敬語も付す。
 しかも鈴井氏の立場は、品性の低い人間ならば、自分の相対的地位の低下を心配して、競り合おうとしたり、ひどい場合には潰しにもかかるだろう。
 そのようなことは全くない。現在の番組の状況を非常に満足げにしている。

 実に感じ入った。故に、誰かにもそれを伝えたかった。

 ちなみに、この鈴井貴之氏、彼は「北海道のカリスマ」と異名を取る映画監督であり、この秋〜冬には第3作「銀のエンゼル」が公開される。小日向文世主演、山口もえも出る。大泉洋も出る。
 彼の監督デビューは、「水曜どうでしょう」の4年目の頃。着々と実績をあげつつある。

 と、小難しいことを言ったが…番組を見るスタンスは変わらない。
 げらげら笑う、楽しい。
 毎週土曜夜10時(神戸、サンテレビ)を楽しみにしてる。

 長くなったが最後に、藤村D(ディレクター)にも敬意を。
 モノづくり、あるいは何をするにも、イメージ力の大切さをあらためて痛感する。DVDの解説から、番組企画当初の彼の言葉。まさにそのイメージ通りに、ローカル番組は、全国ネットキー局に番組を購入させるまでに、成功した。

 「とにかく視聴率を取れる番組を作りたいんです。そのためにまずは『インパクト』。それも『わかりやすいインパクト』。そして『ローカル臭さ』を消すこと。『ローカル局のバラエティー』ってだけで『ダサイ!』ですからね。で、鈴井さん、ばくはね、北海道を出て、とにかく遠くへ行こうと思うんです。無意味なほど遠くに。東京でも、大阪でも九州でも。いや、本当のことを言えば、海外に行きたいんです。」



05.09.13追記:
 かの内田先生も「水曜どうでしょう」を楽しんでおられると知って感激 ^^)
 『水曜どうでしょう』ばかり見ていたらダジャレが止まらなくなった


posted by Shu UETA at 00:45| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
記事、おもしろかったです。
水曜どうでしょうを知らない私にもなんとなく鈴木さんと大泉さんの空気が伝わってきました。
あと、お笑いからここまで考察するUETAさんも考え深い人だなーと感じました。
Posted by spice boy at 2004年08月15日 09:11
> spice boyさん

 いや番組そのものは純粋に笑える楽しいものですよ。
 しかしプロジェクトXじゃないですが、何かたいしたものをつくり出した人たちからは、分野を問わず、学ぶところが多いですよね。^^)
 もしたまたま目にとまることがあれば見てみてください。東京は朝日が放送してると聞いたことがあります。たしか今月末近くにも連夜放送企画があったような。
Posted by Shu at 2004年08月15日 13:26
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。