例によりいろいろ同時並行で読んでいるため、コメントが遅れましたが、
本書はお薦めの良書です。
本書は、昭和天皇自身の自己規定はどのようなものであったか、そしてそれが昭和史にどのような影響を与えたのか、をテーマとして、立憲君主制、昭和初期の内閣・議会・軍の3者の関係、さらには天皇制の歴史的俯瞰等について述べている。
昭和天皇の言行等については他によく網羅された書もあるが、本書では、昭和天皇の自己規定と、それが拠って来る淵源を探るという視点で整理されており、新鮮に読み進むことができた。
また、明治憲法が規定した政治体制、また立憲君主制という制度について解説を加えたものとして、これまで読んだものの中で最も秀逸に思えた。
大正・昭和史について基礎的な知識を持って読むほうがより有益とは思うが、仮にそうした知識を著しく欠いていたとしても、十分に有意義であろうと思う。昭和史のおさらいにも好適。
また、本書はきわめて客観的な立場で書かれており、この手の書に多くあるのと異なり、いわゆる右にも左にも偏った雰囲気は一切ない。(逆に云えば、思想的にそのどちらかに軸足を置く人であっても快適に読めるだろう。)
この書のテーマにおいては余論の部類に入るだろうが、個人的には尾崎行雄の先見性、頭脳のキレには改めて舌を巻いた。
あらためて、と云うなら、もう少し早く生まれて、あるいは昭和天皇にもうしばらくお元気でいて頂いて、おそれながら昭和天皇の下で国政に働きたかったものだと、再度しみじみと思った。
これも余談になるが、およそ指揮官のあるべき姿というものについて私が承知する限り、昭和天皇は、きわめて優れた指揮官の能力をお持ちだったろうということを本書で再認識した。そのお立場ゆえに、それを発揮される機会はほぼ無かったが。
2・26勃発の際にしても、就寝中を緊急報に起こされ、寝所にてまさに起きあがりになった状態で報に接するや、そのままご返答に、暴徒のその後の行方、並びに他の要人の被害状況を質すなど、一見簡単なようでいて、実はなかなかできることではない。
また、これも本書のメインテーマから外れるが、日本における伝統的な天皇の立場ということについて、ひとつのインスピレーションを得たので、別に投稿しようと思う。
さて余談が長くなったが、とにかく本書はお薦めである。
ぜひ一読されたい。

裕仁天皇の昭和史―平成への遺訓
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私は実は昭和天皇を「先代」と呼んでいます。尊敬しています。希に見る名君だったと、いろんな本を読んでも思います。
そして視野の広かったこと、見識の深かったこと。
崩御のときは本当に悲しかったです。
今上天皇とは、徳の高さが違う、そんな気がするんです。
私はとーーーーくの方でお目にかかったことがありますが(というのは私がマスゲームで演技した国体にご臨席になったからです)そのときとても嬉しかったです。オーラが何百メートルも離れたここまで飛んできていました。
それから先日読んだのは、田中首相がかなり昭和天皇に対し無礼(というのは、ぶしつけだったというのではなく、その育ちから「御前に出たときの態度が悪かった」ということです)であったという内容でした。天皇はかなり驚かれたようです。
今昭和史を読むことに取り組んでいます。その意味でも(昭和天皇の語録は持っているのですが)改めて欲しい本だと思いました。
うっかりコメントが遅れました ^^;)
昭和天皇陛下…
僕も本っ当にお慕い申し上げていたんですよ…
お元気でおられる間に、大命降下であれ何であれ ^^;)御前に召されたかったという夢が潰えたときには、すごい脱力感でした。
しかし、僕にとっては、歴史人物の列中に数え申し上げても、尊敬する歴史人物のお一人です。