2005年06月15日

イラク憲法制定支援セミナー


イラク憲法制定支援セミナーの実施について、昨日外務省からプレスリリースが行われている。

 イラク憲法制定支援セミナーの実施について

 僕の個人的な感覚では、日本がよりによって憲法制定について他人様にセミナーするなど、その厚顔無恥ぶりには国民としても汗顔の至り。
 僕が他国人ならば、笑止のひとことだろう。^^;)

 せめて主題を民主制度とか統治機構等にしてほしかったようにも思うが、とにかく、これから新生しようというイラクに害毒を注ぎ込まぬよう、あるいはせめて恥を忍んで反面教師になるようであれば良いがと思う。

 プレスリリースは上記リンクの通りだけれども、一応ここにも引き写しておくと、

 
  1.   わが国政府は、ハージム・ハサニー・イラク移行政府国民議会議長を始めとする同議会議員等14名を本邦に招聘し、6月17日(金曜日)から22日(水曜日)まで、憲法制定支援セミナーを実施する。
  2.  このセミナーにおいては、国民議会各会派から幅広い参加を得て、わが国が経てきた民主国家への道程における経験や克服してきた課題、わが国憲法の基本理念などを共有し議論を行うほか、国会等の関係機関を視察する。また、アジアのイスラム諸国より専門家を招き、イスラムという共通の要素を有する国家の経験をも踏まえつつ、意見交換を行う予定である。
  3.  わが国が、こうした機会を通じ、わが国をはじめとするアジアの経験を伝えることは、本年8月のイラク恒久憲法案作成、10月の国民投票などの政治プロセスに関してイラク国内でのより幅広い見地からの検討に資することが期待される。
  4.  なお、今回の研修はJICA(独立行政法人国際協力機構)による研修事業の一環として実施する。



 「わが国が経てきた民主国家への道程における経験」と言って堂々と開陳できるのは、大正から昭和初期にいたる民主主義傾向の発展と挫折ではあっても、戦後のGHQによる憲法制定、欧米的民主国家への線引きということは、他人様に得々と語れるようなものではない。

 戦勝国の軍司令部の要員数名が数週間で起草した憲法を(形式的に国会の俎上にのせ議論したとはいえ)今日も愛玩愛用しているわが国が、同じく敗戦の憂き目に遭いながら前途多難とはいえ自力で憲法制定に取り組もうという国に、何を指導できるのか。--;)

 指導というよりも、同じような経験の先輩として語ることがあるとすれば、わが国のような失敗をするなということだろう。そしてそれは、(過去の経験ではなく今日も未だに抜けれていないということで)恥ずかしくはあるが、しかしかえって非常に有意義なアドバイスにはなる。

 イスラム文化という、日本以上に欧米スタンダードと政治思想背景に隔絶がある国家として、いかに憲法において欧米風(国際基準)の自由民主制度と、自国自文明の特色、理念を吻合するか、それが最大の難問であり、それに失敗(あるいは放棄)したわが国からは、その失敗によって半世紀の間に社会と文明がどれほど傷ついたかということを知ることにこそ意義があるだろう。そしてそれが今日わが国における改憲議論の一部分にもなっているということこそが。
 僕は、そこをこそイラクの人々に学んでもらいたいと思う。

 そうした意味で、こと敗戦後の憲法制定というならば日本は先輩などではなく未だイラクと同じラインに立っているのであるという面もある。
 近い将来には、逆にイラクが良き先輩になる可能性すらある。^^;)

 もっとも、憲法といわず、統治機構の実運用の様子については、一つの例としてさまざまに見て帰ってもらえばよいのだが、今回のプレスリリースの文言からも、むしろ力点はこちらになるのではないだろうかと思うし、また、イスラムの特性を踏まえての講義や議論も行われるよしであるので、公式に言わずとも、上記のような日本の失敗を繰り返さないための議論にはなるのかなとも思う。
 が、であればなおのこと、セミナーのタイトルは違ったものにしてほしかった(恥ずかし過ぎる ^^;)。

 イラクの人々には、どうか日本の轍を踏まないように、頑張ってほしいと思う。
 ただ…やはり民族問題などが日本と異なる困難な問題にはなると思うが…しかし世界最新の憲法として、憲法概念の進化を含め、最高の憲法を目指して欲しいと思う。

 こうしたことを伝えたいが、あいにく僕には目下イラク人ましてやイラク議会関係者のメル友もメッセ友もいないのが残念。^^;)


posted by Shu UETA at 20:04| Comment(2) | TrackBack(0) | 天下-その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>僕の個人的な感覚では、日本がよりによって憲法>制定について他人様にセミナーするなど、その厚>顔無恥ぶりには国民としても汗顔の至り。
>僕が他国人ならば、笑止のひとことだろう。

全くおっしゃるとおり。本当に冷や汗、いや脂汗がでるような話題ですね。先日、こちら(パリ)で日本紹介プレゼンを実施した際、当然ながら我が国の憲法問題にも触れざるを得なかったんですが、皆、一様に「????????」って感じでした。
別の仏人の友人(女子大生)にこの件を話した時も、軽く一笑にふされてしまい、本当に恥ずかしい思いをしました。
総じて言えば、「色々な事情があるとはいえ、自国の憲法なんだから、問題があれば解決するのが当たり前でしょ?声を大にしていう話じゃない」って感じかな。
正直、この話は深みにはまると、日本語でも説明するのが難しい状態になるので、つっこんで説明するのは控えるようにしてますが・・・

まあ、このセミナーは日イ友好親善のための、ただの「看板」でしょう。彼ら(イラク人にしても外務省の役人)にしてみれば、目的は、もっと別なところにあるような気がします。そう、信じてます。
Posted by at 2005年06月16日 03:40
> imaichi (でしょ?)

 あはははっ いやぁ…imaichiが窮するさまが目に浮かぶ、表情とか。^^;)
 まあ笑ってられるのも他人事だからだけど、僕も似たような経験は何度かあります。
 海外の人に対してことさら自国を貶めるような言動をする趣味はないので、いたってニュートラルな立場で(場合によっては相当に弁護的に)説明するんだけど、相手のほうがエキサイトすることもしばしば。

> 日イ友好親善のための、ただの「看板」でしょう

 これは全く同感。
 とは言え、もう少しタイトルを考えてほしかったなあ…なんて。^^;)
 特にイラク戦前後において、不愉快ながらさきの大戦後の日本と重ねて論じるようなものが散見されてただけに、余計に敏感になってしまう。^^;)

 まったく余談だけど、「仏人の友人(女子大生)」とは、なんだかいいなあ。僕もフランスの子とフランス語で話してみたい(現実にはフランス語は全く話せないけど ^^;)
Posted by Shu at 2005年06月16日 06:29
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