(「日露開戦から100年」第4部広瀬家の人々)
広瀬春江は、軍神といわれた広瀬武夫中佐の兄嫁であり、その広瀬(兄)家では一人娘に養子婿をとっていたが、これもやはり海軍軍人であり、春江は孫らの教育にも厳しく、節倹の口癖があったという。
「お前様方のお父様は、ご自分でお金もうけなさるのではありません。
お上が国民から税金として集めた中から分けて頂くのですから、
決して無駄遣いしてはなりません」
無駄遣い云々は仮に別としても、俸給に対するこのような自覚を、世の公務員は持つべきだと思う。
往時の武士も、武士は天下に寄生しているのではとまで自省した。それが武士の倹約精神の一部をも成し、農工商の民そして天下への責任感ともなった。
なるほど俸給も、労働に対する賃金と言ってしまえば、「お父様」も自分でお金を儲けているともいえる。しかし、そうではないのだ。俸給が税金から与えられているということに対する責任感の自覚は、自らの仕事の質をも変えるだろう。
私は何も公務員・官僚を向こうに回して庶民なるものとの対立構造をあおるような者ではない。かくいう私も以前は公務員だった。その当時の心境を思い出しても、この広瀬春江の言葉には、かくありたいものと思うのである。
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