2005年04月12日

スペインの自虐と没落


 これは夙に有名なことかもしれないのだが、
 最近つくづく、プロパガンダ的史観勢力とのせめぎ合いの中で、あらためて思い返すことがある。
 それは、かつての大航海時代以降のスペインの自虐とエネルギーの喪失、没落のさまだ。

 今日は、「地球日本史(1)」における西尾幹二氏の文章を引用して紹介しておきたいと思う。
 なお当該部分での西尾氏のテーマはヨーロッパの植民地争奪戦である。(が、僕にはそのままそれを今日の日本の状況に照らし、読んだ当時にはちょっとした恐怖が感じられた)

 ■ 歴史歪曲の一奇書がスペインを暗黒国家にした

 スペインは西欧側からみると、近代西欧における最初の覇権国家であった。イスラム教徒をはじめとする異教徒らの強力な襲撃に抗し、キリスト教世界を守り、地球上の異質世界に進出し、「白人の責務」を貫いた。
 この点で、西欧側から見てスペイン人の偉業は、二十世紀の宇宙開発にも比すべきものであると信じたいところだが、スペインはその後没落し、近代国家として二度と立ち上がることができなかった。ポルトガルも同様である。それはなぜか。次のようなおもしろい詩句がある。

「人が喋っているのを聞けば、どこの国でおぎゃあと言ったか、すぐわかる。
 イギリス人を賞め賛えていたら、そいつはイギリス人だろう。
 プロシャの悪口を言っていたら、そいつはフランス人だろう。
 スペインの悪口を言っている奴、そいつはスペイン人だ

 アメリカ合衆国の祖たるイギリス人はインディアンを冷酷残忍に扱ったという点において、スペイン人の振る舞いと同じかもっと悪いに違いない。けれども誰もそのことを忘れてしまい、スペインとなると「黒の伝説」がつきまとう。中南米のインディオを大量虐殺し黄金を奪ったスペイン、狂信のスペイン、異端尋問のスペイン、文化国家の仲間入りできないスペイン、凶暴きわまりない闇の歴史を持つスペイン、進歩と革新の敵スペイン----そういうイメージにつきまとわれ、世界からの憎悪と中傷、プロパガンダと偏見に圧倒され、スペイン人自らが自分の歴史に自信を持つことができない。
 (中略)諸国民のイスパノフォビア(スペイン嫌い)にやられ、自分で自分を否定し、自己嫌悪に陥り、進歩を信じる力を失った最大級の自虐国家はスペインである。
 しかも、それはたった一冊の薄っぺらい本から起きた。修道士にして司教バルトロメ・デ・ラス・カサスが1542年に現地報告として国王に差し出した「インディアスの破壊についての簡潔な報告」(岩波文庫)がそれである。からし粒ほどの小著なのに、大方の国語に訳され、世界中に広がり、深々と根を下ろし、枝を張った。日本でもよく読まれている。
 書かれてある内容が凄まじい。キリスト教徒はインディオから女や子供まで奪って虐待し食糧を強奪しただけではない。島々の王たちを火あぶり刑にし、その后に暴行した。
 (その他残虐例の数々、略)
 こういった残虐非道がこれでもかこれでもかと、へどがでるほどに繰り返される。問題は記述内容に対してなんらの歴史検証もされずに、十六世紀スペインの敵国オランダやイギリスが銅版画つきの想像絵を添えて、世界中にばらまいたことだ。スペインを叩く強力このうえない武器と化し、プロパガンダはやがて「歴史」として定着した。そこが恐ろしい。

 1985年に「憎悪の樹」(論創社)という反論の一書が現れた。(中略)当時ラス・カサスは自分の意見に反する意見に一言なりとも実のある言葉を発することができなかった。虚偽、歪曲、誇張、でたらめの書である、と。

 徳川幕府がスペインを退け、オランダを受け入れたとき、オランダ側の反スペイン宣伝は相当なものがあったといわれる。ラス・カサスの書が利用されたかどうかは確認されていない。



 ちなみに文中触れられている「憎悪の樹」については、こちらで解説記事を参照できる。

 我が国も、他人事ではすまないかもしれない。
 くわばらくわばら…(死語? ^^;)

 


posted by Shu UETA at 19:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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