2005年03月08日

中韓反日への対応

music You Can't Hurry Love / Phil Collins

 最近の報道に(読売だと今日だが)また、韓国国内での(彼らに言わせれば)「親日的」言論が話題になっている。
 今回は一流の高名学者の論文であるだけにとりわけ韓国国内での取り上げられようが凄まじいようだが、彼(韓昇助氏)の論は、別段親日というものではなく、より正確には韓国の反日姿勢が過度であり歪んでもいるという主張のようだ。

 高麗大名誉教授、日本支配を評価の論文…韓国で猛反発(読売)

 日本の統治「再評価を」 保守派の論文に韓国メディア非難一色(産経)

 ふと僕が思うには、どうも最近、韓国国内でのこうした日本統治再評価であるとか、あるいは親日表明、また韓国の歴史認識に対する批判といった言論の頻度が高まってきているような気がする。(いや、気のせいかもしれないが)
 今回も内容については特に真新しいものはないのだが、そうした意味で少し記憶をたどらされた。

 そうしたことから、常々問題意識は持っているものの、再度、周辺国(と言っても事実上中韓二国だが、北は別枠として)の反日姿勢と、日本がとるべき態度ということについて考えてみた。

 さきに書いたように、僕は、韓国国内での、いわゆる韓国の一般的歴史認識に反するような、むしろそれを批判するような、あるいは親日的言論が近年増えているような気がする。

 むろん、韓国にしては、という程度のことであり、絶対数自体はやはり少ないものの、しかしそうした言論を公にすることで被る莫大な不利益ということを考えると、それでも数は多いくらいかもしれない。
 そして、僕は「増えているのでは」と言っていても、もちろん正確なデータなどなく、ただ感覚的な感慨だが、ここ3年ばかりと、それ以前では明らかに差がある気がする。3年前以前にも、そうしたことはあったがただ報道されていなかっただけなのだろうか…

 僕が近年と言って思い出しているのは、たとえば次のようなもの。

 3年くらい前には、かの「親日派のため弁明」を金完燮氏が出したが、韓国国内では発禁、著者自身も外患罪に問われて拘束されもした。
 昨秋にはソウル大の李栄薫氏がシンポジウムでの発言を叩かれていた(ソウル大教授「日本による収奪論は作られた神話」
 今年に入って記憶の新しいところでは、有名タレントの趙英男氏が著書に親日派を自認したことが話題に。(韓国有名タレント“親日派宣言” 著書で偏見と誤解指摘
 そして今回の高麗大名誉教授の論文だ。

 内容はそれぞれ、異なるし、この際気にしないでほしい。また彼らそれぞれの主張に関する論評もここは措く。
 着目したいのは、内容の妥当性がどうであれ、いずれにせよ韓国国内で猛反発されるような「反・反日」言論が行われる頻度というものが、現在明らかに高まっているように思える。

 なぜだろう。

 例のタレント氏は「殴り殺される覚悟で」というコメントが当時有名になったが、実際、比較的言論の自由が政治的にも社会的にもある程度確保されているような国民からすると想像がつきにくいが、韓国という国は、一応自由主義先進国に手をかけている国とは思えないほど、こと日本論に関しては、言論の社会的封殺の力が強く、かつ「親日派の…」著者が上梓早々に外患罪の容疑で当局に拘束され出国禁止、本は発禁ということを考えると、社会的のみならず政治的にも言論の自由度はきわめて制限されている。

 こうした環境下で、そうした言論を張ることによるデメリット、いやデメリットというよりも自らの生存の危険は相当に高い。
 それを当然ながらわれわれ以上に承知の上で、それを行うというのはなぜだろう。そしてここ半年ばかりでもこうも続くのは。

 韓国国内の雰囲気として、雪解けムードにあるのだとはとても思えない。
 僕が想定し得るとすれば、ひとつには例の「親日・反民族特別法」により、それを批判する衝動が起きているという可能性。
 もうひとつは、韓国国内での左派台頭、親北傾向の高まりに対する右派からの反撃ないしは警鐘の動きという可能性。
 そしてもうひとつ、単なる偶然 ^^;)

 僕自身が見聞する限りでは、実際、韓国の歴史認識というものは相当に歪んでいる点が多く、それらは韓国の学者たち自身も多くが認めているといわれる。
 例えば、日本統治を全面的に否定する要請から、相対的に李氏朝鮮は高く評価される必要があり、例えば韓国経済史でいうところの「萌芽論」(韓国の資本主義は李氏朝鮮において萌芽していたが、それが日帝支配により停止させられ、韓国経済の成長は半世紀ばかり遅れた)など、あまりにも非現実的な公の常識は枚挙に暇がなく、よく「昼は反日、夜は親日」などと言われるように、既に何年も以前から学者の世界などではそのことは禁忌的な裏の常識となっているとも聞く。

 さて問題は、つまり学者の見解が変わってきたというよりは、見解を表明するかどうかということであり、ここ最近「表明」が続いている点に僕は関心を持っているわけだ。

 しばらくさらに見守ってみたい。

 が、「見守ってみたい」というのは、僕の場合単なる知的興味といったところで、日本にとって対韓外交の上で何らかの期待を抱いているわけではない。
 仮にこうした最近の動きが何らかの対日観の変化の兆しであったとしても(現時点で僕はそんな風には期待していないが)、その他の何らかの大きな歴史的事件、契機でもなければ、韓国の対日観が転換することはないだろうと思っている。
 韓国人のアイデンティティ論など、この点についても考えれば切りがないが、それも今日は措くこととする。

 むしろ僕の考えでは、韓国の反日については、そう深刻に取り合う必要もないのではないかと、近頃思い始めた。

 対韓関係というものは、実は日本にとってさほど戦略的に重要なものではないとも言い得ると僕は思っている。

 経済面においても、極論すれば韓国と断交したとて日本の死活に影響などない。(むろんそれが経済関係である以上、当然デメリットというものはあるが)
 安全保障面においても、共同の可能性は対北のみであって、そして日本の防衛上、これに関して韓国に負う点はほとんど無く、それらは多く米国に依頼すべき事項ばかりである。六カ国協議も、米中にロシアまでが頼みの綱であって、韓国に期待できる点はもとより少ない。また究極的に敵対したと仮にしても、韓国に日本侵攻能力などなく、それは半島が統一されたとて同様だ。
 そしてこれらはいずれもあり得ないような極端を言っているのであって、実際、いかに今日の反日が維持されようと、経済的にも政治的にも断交などということはあり得ず、現に今日そうであるように、政治的摩擦があろうとも、金は動くし人も動く。もはやこれらの流れは止めようもない。

 つまり日本は、政治的問題や反日問題といったことをよそにして国境を行き来するヒト、モノ、カネの流れを流れるにまかせはするが、わざわざ政治的に必死になってこれらをさらに拡大しようと努力するほどのこともないし、それが最大限まで拡大されたとて大した規模にはなり得ない(中国とは違う)。

 国際外交においても、アジア外交においても、日本にとっての韓国の政治的位置づけなど、たいしたものではない。

 そこで唯一残るものは、国家戦略というよりは、きわめて人間的な感情の話であって、隣人と仲が悪くては気持ちがよくはないという程度のことだ。あるいはより高尚に言えば、戦前の問題も含め、道義的な感覚の問題に過ぎない。

 また、上述にも関わらず、しかし日本が厳重に着意すべきこととしては、半島が、日本にとっての脅威国の勢力下になってもらっては深刻な問題となるということはある。
 地政学的に言うならば、日本にとって朝鮮半島は日本の死生を制する位置づけであって、昔のような弱肉強食の時代であれば戦略的には日本は断固ここを抑えておく必要があるが、今日は最早、半島を大陸国と海洋国が自由に奪い合うような時代ではなく、少なくとも当面、朝鮮半島が中国やロシアに支配されるなどという危険を考える必要もない。
 戦前の日本でさえ、朝鮮が独立を守ってくれてさえいればそれでよかったのであって、独立を保ち得ぬために、ロシアによる奪取を防ぎ、自らこれを取らざるを得ない面もあった。しかし今日の韓国は、独立を危うくする怖れはほとんどあるまい。

 であれば、つまり韓国の反日姿勢など、それが不愉快ではあっても、ことさらそれに取り合うのではなく、さほど問題視する必要もなく、好きにさせておけばよい。
 日本が反韓姿勢をとる必要もないし、反日をやめてくれと頼む必要も、頭を下げる必要もない。
 今日の関係を続ければよいし、より流れが太くなればそれもよし、細くなっても別に去る者を追うほどの必要もない。
 いずれにせよ、韓国政府が禁止でもしない限り、ヒト、モノ、カネの動きは加速こそすれ、縮小はすまい。

 日韓友好年なども、最近はまた竹島問題との絡みで韓国側がイベントの縮小や制限などを言い出しているが、別に日本は深刻に受け止める必要もない。
 そもそも日韓友好など、韓国にとってこそメリットが大きいのであって、日本にとってはどうでもよいことだ。(前述したような「感情」的問題を除けば)

 日本は韓国が気持ちよく手を差し出してくるまで、静観して自由にさせておけばいい。むしろ、こうした韓国に対する超然主義という姿勢を多少示した方が、韓国側に影響を与え、再考を喚起する可能性もあるかもしれない。



 さて反日といえば、もう一方の雄、中国だ。

 こちらについては、戦略的な対応が必要だ。経済面でも安全保障面でも、国際外交面においてもアジア外交においても。

 しかしこちらの反日については、楽観し得る点もいくつかはある。

 ひとつは、中国とはきわめて合理的な判断をする国であって、反日という政策ひとつとっても、それは合理的な必要の裏付けにおいて理性的に実施されている面が強いように思う。
 これは、逆を返せば、親日が割に合うと判断するようになれば、政策の転換は明確に行われ得るということだ。
 かつ、中国国民の反日というのは韓国のように深く根ざした国民感情というよりは、偏に政府の教育、報道政策に拠るところが大きく、政策の転換は比較的速やかに国民意識にも反映され得る。

 もうひとつは、上記とも関連するが、中国は実のところ日本だけでなく、例えば米国などにも万事につけ非難声明ということは頻繁に出しているのであって、それらは特定の場合を除けば、自らの立場を示すために行われるものと、国内勢力向けの姿勢を示すために行われるものが大部分であって、日本のように常に深刻に思い悩む必要がない場合も多いように思われるということだ。

 個人的好悪を言うならば、僕は中国政府は好きになれないし、友としたい気も全くないが、しかし日本という国の戦略としては、将来目標的には、中国との親しい友好関係というもののメリットは大きい。非常に大きい。

 そこで、対中関係においては、しっかりとした構想を定めて対していくべきと思う。それについてもさまざまに考えているところはあるが、今日のところは触れず、いずれまた記事にしてみたい。

 現状ということに限れば、首相の靖国参拝等をめぐり、日中双方ともに、ちょっとした手詰まりの観があるように思う。

 そしてこのことは、日本外交にしてはよく保っている手詰まり状態だと思う。つまり、安易に諂い妥協することを避けているという意味で。この点に関しては、小泉首相の姿勢を僕は支持している。
 外交に焦りは禁物、近年の日本外交としては、現状のような手詰まり状態を招来できているだけでも上出来だ。今しばらく様子を見てもよいと思う。タフ・ネゴシエイターであらねば。

 靖国参拝:1月に小泉首相、参拝前提の対中外交を指示(毎日)

 日米関係とは、およそ日本が関係を持っている国の中でも最も安定した友好関係にあり、それは米国側から見ても、やはり最も安定した友好関係のひとつだ。
 しかし当然ながら、そんな日米関係においても、分野ごとに見れば激しく対立する分野というのはこれまでも常にあったし、現在においても例えば牛肉輸入問題なども大いに対立している。

 何が言いたいかというと、日中関係は、日米関係のように幅広い関係の中で、個別分野ごとの問題をあくまで個別分野として冷静に処理していく心づもりが重要だろうと思う。
 日米関係においては盤石の友好がある故に安心して個別分野でのケンカもできるわけだが、日中関係においてはこれとは逆に、各対立をそれぞれの分野内の問題との認識におさめつつ、可能な個別分野内での個々の友好を少しずつ増やして行きながら、総合的には常に冷静な関係を保ち得るようにしていきたい。
 当面の間、大きな契機を得るまでの間、日本としては個別分野を他分野や全体とは分けて議論するという姿勢を鮮明にしておくのがよいのではないだろうか。

 これは、ある分野での対立を他分野に影響させないということ、また、ある分野での前進のために他分野の主張を取引犠牲にしないということ、つまりは、中国という国の中の、さまざまな別の国と付き合うくらいな感覚で取り組むのだ。

 さきにも書いたが、対中外交についてさまざま考えるところの方策案等については、いずれまた別に記事にしてみたい。


posted by Shu UETA at 13:24| Comment(4) | TrackBack(4) | 天下-安全保障・外交 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております

日韓関係においては、当初Shuさんと似たような思いを持っていました。「静観して自由にさせておけばいい。むしろ、こうした韓国に対する超然主義という姿勢」ですね。ただ、国と国のあいだにおいてこれを行っては、声の大きなほうが言ったことが既成事実可するかするという恐れがあります。同じ土俵にたって争うことはないですが、国際社会の場において日本の立場や意見を主張しておくことは必要かと思っています。
意見というより、国際的に認識されている事実関係をならべて、あらためて議論する必要はなし、ぐらいのことを言っておけばよいかな、と。
Posted by toybox at 2005年03月25日 08:27
上のようなコメントをつけたのですが、最近の記事をよませていただいたところ、静観せよ、という感じでもないのですね。失礼しました。
Posted by toybox at 2005年03月25日 12:59
> toyboxさん

 いやあ、、感激ですっ
 お久しぶりですね〜

 どうされているのかと思っておりました(大きなお世話ながら ^^;)

 あらためまして、今後ともよろしくお願いします。

 近日来の韓国の様子は、ますますストレスの種で、もう新しいニュース記事を見たくなくなります。(見ますけど ^^;)

 これが解決するというのは、余程のことがなければあり得まいな…と暗澹とした気持ちになりますが、何か方策を考えてみたいです。
Posted by Shu at 2005年03月26日 02:56
私も最近は、傍観ならぬ傍韓ですね(--;いや、呆韓か。たぶん、彼ら自身が気がつかないとこの状況の打破にはならないとは思うのですが、日本は日本で国内に存在する妙な勢力(なぜか韓国側の主張をそのまま広めようとする人たち)をあまり勢いづかせないような努力はしていくべきかと。

実のところ、自分がそのように(=傍観)なるにいたって、最前線にたつ外交官僚や政治家も同じように、もうつきあいきれん!とか思ってなげだしてるのではないかと危惧しています:-)

こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
Posted by toybox at 2005年03月26日 03:33
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