2004年12月26日

露大統領北方領土牽制

 さて、来春の露大統領訪日を前に、前哨戦が始まっている。^^)

 外相の訪露に先駆ける形で(さすがロシア…^^;)、ロシア側の牽制

 露大統領「二島返還で決着」 日ソ共同宣言実行を強調

 プーチン大統領、「2島返還」を強調

 現在のところ、首相は全く動じていないが、こうしたロシア側の牽制に揺らぐ様子を見せないよう、気を引き締めてもらいたいと思う。


 露大統領の主張の根拠は、日ソ共同宣言における「2島返還は平和条約締結後」との文言を、領土問題は2島返還で解決との趣旨にとるというものだが、これがその後の日ソ日露間の交渉経緯を無視したものであることは、おそらく大統領も認識した上でのことだろう。交渉前段階での牽制の意味合いが強いものと思われる。

 過去の交渉経緯については、外務省のものもそう偏った手前味噌でもないので、参照に足るだろう。

 北方領土問題の概要(外務省)
 北方領土問題の経緯(外務省)

 少なくとも昨年の首相訪露の時点まで、大統領は、領土問題に4島を含む前提を確認しており、領土問題の対象は2島のみとの見解は、プーチン政権以前に比べというより、プーチン政権においても従来の姿勢をくつがえすものであり、日本がそれを受け入れるとは考えていないだろう。

 しかしながら、外交交渉は、双方がまずは自己主張をはじめるところから開始され、交渉を通じて妥結を探っていくものであるから、スタート地点としてロシア側がまずは自分にとって最も有利な主張から始めるのは不思議ではない。肝心なのは、それで日本側が過敏に反応、不安に動じて、主張を緩ませるようなことのないよう気を付けることである。これは、首相、外相のみならず、政権内や野党、世論においても同様だ。
 このような意味では、ロシア側の威力偵察的な意味合いもあるかもしれない。

 とりわけ、日本は近い過去において2島返還論などのサインをロシア側に送ってしまっていた経緯もあり、ロシア側としては威力偵察をする意義も十分あるだろう。
 案外日本側の4島返還論は一枚岩ではない、といった印象をロシア側に与えないよう着意してほしいと思う。

 もう一点は、上記産経記事にも言及されている石油パイプライン問題をはじめとする経済等関連問題との安易な天秤がけをしないようにしてもらいたいと思う。
 領土問題は国家の主権に関わる問題であり、損得の問題とは次元が異なる。特に得がないので要らないとか、得があるから欲しいとかいう話ではないのだ。
 しかしながら我が国の場合、現に中国との関係においても、徒に経済的利益を追求するあまりの、非経済分野における安易な妥協論が横行しがちであるように、問題の本質を見失う傾向が気になるところだ。


 日ソ共同宣言における、平和条約締結後の2島返還とは、ソ連側が主張する2島返還について時期を記したものに過ぎず、交渉そのものについては継続交渉を宣言したものであり、これをもって2島返還で解決としたものではない。

 また、東京宣言では明確に4島を交渉対象との確認がなされており、その後のイルクーツク声明でも、日ロ行動計画でも、その踏襲が唱われている。

 こうした意味でも今回の大統領の声明は交渉経緯への明らかな逆行であり、先方も当然そうした認識はあるだろう。

 また、日本は、ロシア(ソ連)側が従来主張しているヤルタ協定については、その無効性(秘密協定であり日本は了解せず、かつ当事者の米国は一貫して北方4島と千島列島の別を支持)を、また日本の無条件降伏については、日本軍の無条件降伏と日本の条件降伏を混同しないよう、もう少し強く主張してよいと思う。
 (もっとも、こうした話をせねばならないこと自体、議論の後退であり本来不要であるが)


 さてこうして、基本的立場を揺るがせるべきではないが、しかし一方で、過去の歴史的経緯や法的検証といったスジ論だけではロシアの妥協を引き出すことはできまい。そこで、何らかの付帯的交渉が必要になるだろう(これは公表される必要はないし、僕もあずかり知ることはできないが)。そうした意味での柔軟性は必要だ。
 これは何事についても同じ、原則に忠実、手段は柔軟に、といったところか。
 とにかく、4島返還という原則において揺らがないよう厳に着意してほしいものと思う。(政権も、与野党、世論も)



posted by Shu UETA at 19:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 天下-安全保障・外交 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「損得」で考えて「二島返還」を内約してきちゃったのがあの「ムネオ」ですよね。
田中以降のああいう政治、私は大局が見えなくなるのでとても嫌いなのですが、今回はムネオもいないことだし、ぜひ四島返還に向けて一歩でも前進してほしいものです。

しかし相手はロシア。なにしろやはり国際常識が通用しません!ロシアが「それもそうだ」と思うような対話の手段というのを、私は知らないのですけれど、どうしたらよいのか…

全く関係ありませんが、ロシアに住んでいる友人がいて、クリスマスカードを12月初旬にだし「ついたら念のためメールください」と書いたのですが、まだメールが来ません。着いていないのでしょうか…
なんでも税関のボールペンが貼り付けてあるとかないとか(職員が取るから)
Posted by ぶんだば at 2004年12月27日 11:53
> ぶんだばさん

 お返事遅れました… ^^;)

 実は個人的には僕は、ロシアは、それほど国際常識が通じない相手とは思っていません。単なる善悪論や正義論で外交が進まないのはどこの国であっても、むしろまっとうな国であれば同じではないかな、と。
 もちろん、中でもロシアはタフネゴシエイターではあるでしょうが… ^^;)
 しかし、相互に利不利を突き合わせつつ、妥協点を見出していき得る相手だとは思っています。
 ま…日本外交の手腕が問われるところでしょうね。(この点で不安 --;)
Posted by Shu at 2004年12月30日 01:30
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