2004年11月19日

甲野先生講習会

music 冒険者たち / Do As Infinity

 今日は、甲野善紀先生の講習会に参加してきた。
 先日たまたま内田樹先生のblogを発見し、ちょうどその日の記事に、神戸女学院合気道部での甲野先生の講習会の連絡があり、部外者も若干名参加可とのことで、早速申し込んでいた。

 感想、素晴らしいのひとこと。


 個人的には、数年来、甲野先生の著作やビデオ等を見ながら研究してきていたが、目の当たりにしたのは初めて。
 しかも、大所帯での講義、講話的なものでなく、甲野先生と内田先生の個人的交友関係によると思われる、小規模な内輪の講習会で、部屋は20畳あるかどうかの神戸女学院の小さな道場、参加人数も30人弱くらいに見えた。
 文字通り、ごくごく間近、至近で甲野先生のお話を聞き、実演を見ることができた。しかも休憩なしの3時間!なんという贅沢っ

 惜しむらくは、稽古着を持っていってなかったこと。直前ギリギリまで迷ったんだけど、講習会の規模、参加者が皆どんな服装で来るのか、また果たして着替え場所があるのかどうかが不明で(「それ相応の格好で」との記載はあったが)、今回のところは、実際に技を体感できなくとも、間近で見れれば上等と考えて臨んだ。
 結果的には…ほとんど全ての人が稽古着 ^^;)
 おかげで、実際に技をかけてもらったりはできなかったが、いずれにせよ僕の場合、目下は体術ではなく剣に血道を上げている(大袈裟)ので、目的に照らすと、そう無念であったわけではない。

 合気道部での講習会ということで、剣術、居合術はあまり語られないだろうことは予測がついていたが、何よりも、僕の今回のテーマは、「足捌き」そして「足裏の垂直離陸」を実際に見て少しでも感覚をつかむことだった。
 加えて、「三方斬り」だけはどうしても見たくて、できればリクエストしたいと思っていたが、終盤に、ちょうど演って見せていただけたのでラッキーだった。

 そして、こうした目的は、大いに達せられて、大満足で帰ってきた。明日、いや今夜から、試してみることが山ほどある。
 その後、懇親会もあったのだが、どうも既からの顔見知り同士内輪で盛り上がる雰囲気と感じられたので、今回は遠慮して早々に帰宅。とにかく、早く試してみたいことが次から次へと頭の中を駆けめぐっていて。

 個人的な成果としては、下記のとおり。

■足裏の垂直離陸、あるいは膝の抜きということは、これまでも自分で試してみていたが、本やビデオでもどうもぴんとくることができず、果たしてこれでいいのか…と不安だった。今日実際に、文字通りすぐ目の前で、何度となく実際に拝見して、かなりイメージアップできた。
 また、座った状態で、足の接地面を浮かせるという実演を併せて、よりイメージがわかった。
 基本的にはこれまで試行していた方向性で誤ってはいないようで、意を強くした。あとは、精度だ…稽古あるのみ。

■歩みについて、頭ではわかっているが、なかなか上手くできないのが、前足を消すということ。
 今日のお話では、「剣山を踏む心地」という言葉と、「ONとOFFを絶えず切りかえ続けること、前に足を出すことでONには自動的になるから、それをOFFにすることを絶えず繰り返す」という言葉で、なんとなくまたイメージアップできた。そのイメージで稽古を続けてみよう。

■上半身を漂わせるような身体操作について、「上半身の下端は肋骨の下端、ここで上半身の抜きを操作、腰が邪魔になるので腰を消す」というお話が印象的だった。

■「同時並行処理」ということも、頭ではわかっていたが、今回実演を見て初めて具体的にイメージがわいた。
 向かい合って互いに手のひらを下向けに、自分の手のひらの背に軽く相手の手のひらの先が触れる状態から、素早く相手の手の背を叩く、もしくはつかむということを見せてもらったが、相手の手をたたける(つかめる)位置に自分の手が行く前に、すでに手はたたく(つかむ)動作に入っているということ、これは非常にわかりやすかった。
 また、そうして手を相手の手の上の位置に回すのを、腕を動かすのではなく、膝の抜きで上げ、腰の微回転で水平方向の移動をさせるというのが、また非常に印象的だった。これは、剣の操作にも応用できそうだ。

■「追い越し禁止」術理というものが、今回最新の術理紹介ということだったが、これは、身体の(便宜的に)作用点までの出力系において、作用点に近いところから遠いところまで、遠いところの部位がその前の部位を追い越さないというもの(と現時点で僕は理解している)。このこともさることながら、「追い越さないけど『車間』は空けない(遊びはつくらない)」ということが、また印象的だった。

■最新といえば、まだ具体的結論に至っておられないとのことだったが、少なくとも最新の「気づき」として、剣の袈裟斬りにおける、垂直方向への力の維持について語っておられた。これには、非常に考えさせられた。

 垂直に真っ直ぐ振り下ろす際には、刀の軌道は重力線に沿ったものになり、これを利用することができる(すべき)だが、袈裟斬りにおいては、軌道が斜めであるため、重力線よりも、ただ腰の旋回等によって剣が振られることになる。そして刃筋さえ合えば、それで実際に十分切れてしまうが故に、あまり顧みられることがない、と。先生ご自身、30年間、誤っていたと仰っていた。具体的な術理としてお話がきけるのが楽しみだ。

 とはいえ、ヒント的に、「要は瞬間瞬間の重力線方向の意識」「微分」というようなことを仰っていた。「微分」という感覚はわかりやすい。あとはそれをどう具体化するかだが、先生は、そうしたイメージを持つだけで既に斬撃力は随分違うと話しておられたので、今後稽古の中で試していこうと思う。

■腕が何かをするのではない、ということは、さまざまな人が常々話しているが、甲野先生が今日仰っていた「腕は、身体の力が通っていく道路をつくるのが仕事だ」「腕の力で何かをするのではない」という言葉は、あらためてイメージを強化してくれた。
 剣においても常々着意してはいるが、いっそう、その感覚を高めていきたいと思う。

■互いに剣を構えて(正眼)、相手が全く触れ得ない(というより反応し得ない)速さで剣が相手の胸に届くさまを実演してもらえた。正直、個人的には今日拝見した中で最も驚嘆した。実に…許されるなら携帯でムービーに収めて帰りたかったほどだ ^^;) 数回演じて見せていただいたが、どうしても、具体的な身体操作を見切ることができなかった。

 言葉では、「普通に剣を振ると、支点をもって弧を描く動きになる」「笏を持つような感じから…」と仰っていたが、これをヒントに、また瞼に焼き付いた映像をもとに、研究してみるつもりだ。(笏(しゃく):束帯を着ているとき、右手に持っている細長い板のこと)

 突きに見えないこともなかった…現時点の感覚では、弧を描いて振り下ろすのではなく、棒が倒れるように剣が倒れていくのと同時並行処理的に、足と肩〜腕を操作しているのではないか…という印象があるが…いろいろ試行錯誤してみよう。

 速さ、ということについては、どれくらいの速さを念頭に置く、つまり知っているかということが重要だ。少なくとも今日実際に目の当たりにした速さ、あの速さをイメージとして念頭におきながら、技を研究しなければ。それだけでも実に有意義な経験だった。
 願わくば、もしまたこうした機会にめぐり逢えたなら、一度剣を交えて体験してみたいものだと思う。

■とにかく今日は常に先生の足から目を離さないようにしていたが、普通に室内を移動なさる際の足捌きからして既に常人でない感じだ。稽古には理屈とイメージが必要だが、今日は本当にたっぷりとイメージを持ち帰ることができた。これが色あせないうちに、とにかく稽古だ。^^)


 今日は本当に幸せだ ^^)
 やはり百聞は一見に如かず。
 当面は稽古に熱が入るなあ…楽しみ楽しみ


 余談ながら
 神戸女学院を訪れたのは初めてだったが(岡田山キャンパス)、素晴らしい環境のキャンパスだ、そのことにも感じ入った。
 正門を入ってから、講習会の会場まではわりと歩いたのだが、小さな山がまるごとキャンパスといった態で、行きも帰りも、歩きながら常に木々の香が充満していた。天候のせいもあるのだろうか、まさに森林浴と思えるほどに、香り立っていた。
 神女のひと、見てないだろうけど、君たちは素晴らしい環境で学んでいる!^^)


posted by Shu UETA at 22:02| Comment(7) | TrackBack(1) | 武術/身体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。えこまと申します。私も昨日、はじめて甲野先生の講習に参加しました。息子の柔道着を借りて(笑)。懇親会にも行ってきました。内輪でかたまるというより、もっとフランクでオープンで楽しかったですよ♪私は摺り足を見ていただきたかったので甲野先生に居酒屋の床の上で見て頂きました!
Posted by えこま at 2004年11月20日 10:00
> えこまさん

 びっくりです。
 よく僕のblogに行き当たられましたね ^^;)

 ちなみに、武術/身体カテゴリでコメントをいただいたのは初めてですっ
 今後とも、いろいろ情報や考え、感覚、試行錯誤(^^;)を交換していけたら嬉しいです。
 ぜひぜひ、よろしくお願いします ^^)
Posted by Shu UETA at 2004年11月20日 10:09
そっさく私のブログへコメントとトラックバックをありがとうございます。
こちらのブログには、自分のブログを解析していたら
以下からアクセスがあったのでリンク元をたどると、その頁にShuさんのブログが紹介されていたのでアクセスしてみたのです。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
http://news.drecom.jp/search/?q=甲野善紀&search_type=t_1
Posted by えこま at 2004年11月20日 11:22
初めまして!
と言っても、Shu君の知っている「Skyboy」です。

いや〜、それにしても羨ましい限りです(^^;
と、同時に「個人的な成果」の記載は参考になりました。特に、「足裏の垂直離陸」と「前足をけす」に関してはいつも???って感じで疑問に感じていたもので....
でも、なかなかイメージ通りに体は動いてくれないものなんですよね〜(^^;
Posted by Skyboy at 2004年11月30日 23:38
> Skyboy

 いや…「君」付けは不要だよ、オレの場合本名だから、なんか妙に気色悪いし。ははは ^^;)

 たしかに、甲野先生の術理は読んでも見ても難解なものが多いけど、今回は、かなり理解が進んだものもいくつかあった。
 今度会ったときに、理解した範囲で教える、いや伝えるよ。請うご期待 ^^)
Posted by Shu at 2004年12月01日 00:42
はじめまして。小次郎です。
甲野先生の講習会について読ませて頂きました。
僕はつい最近、甲野先生の存在を知り、それまで武術や格闘技には全く興味がなかったのですが、僕の全く知らない身体の動きに興味が沸いて、関係書籍やビデオなどを漁っている毎日です。何か新しい光が差し込んだようで、楽しいです。(まだ全然身体で理解していませんが・・泣)
 またこのページを拝見させていただきます。
Posted by 小次郎 at 2006年01月08日 23:04
> 小次郎さん

 はっじめましてっ

> 新しい光が差し込んだようで、楽しいです

 そうそう、それっ、それですよねっ!
 単純に過ぎる言葉ですが、「楽しい」、この言葉に尽きますよね!

 あるひとが(って高岡英夫さんですが)、一見もはやフロンティアを失ったかに見える現代、身体の内側にこそ深淵なフロンティアがあると言っていますが、
 その身体ってものは、誰もが持っていて(当たりまえですが)、そして一生使っていく、つきあっていく、つまり死ぬまで無くならない ^^;) ものなんですよね。

 そう考えると、これを「楽しめる」ことほど楽しいことは、そうそうないかもしれません。^^)

 歩き方の微妙な変化で快適さの変わる感覚、あるいは棒切れ一本を上下に振るだけの動きの中にある新しい発見や工夫、変化の楽しみ、本当に楽しいです。

 人間としての(思考等知的活動も含めて)あらゆるパフォーマンスに影響するという実用性も無論さることながら、単に趣味としてもこれほど奥深く楽しめてかつ身体ひとつあればできるような素晴らしい楽しみはないのでは、とすら思います。

 うっ、どうも長舌が過ぎました…
 僕もまだまだ偉そうなことが言えるほど精進も探求も進んでいませんが、ぜひいろいろ情報交換などしていきましょう。
 よろしくお願いします ^^)

 (メール等もどうぞお気軽に ^^)
Posted by Shu UETA at 2006年01月09日 00:29
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Tracked: 2004-11-20 09:50
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