2005年12月09日

外相戦略構想とマスコミ的関心


 toyboxさんのところで「アジア戦略 by 麻生外務大臣」という記事が載ったのは昨日のことなんだけれど、
 toyboxさんいわく、
 「このような文章は、広く国民が知るべきと思うのだが、一面さいて紹介しても良いのではないか>各紙」
 僕はまったく同感。

 とりあえず、まずは麻生外相の演説を一読してみてほしい。

 わたくしのアジア戦略〜日本はアジアの実践的先駆者、Thought Leaderたるべし




 実は、語られている構想、方向性ということでは、僕は全く同感とまでは思っていないし、見解の相違はある。(例えば東アジア共同体という構想の在り方についても)

 しかしそれは議論すればよいこと。

 今回僕が格別主張したいのは、(そのように個人個人で見解は差があれ)これが、外務大臣の口から、それも全体構想、方向性としてまとまった形で語られているビジョンであり方針であるということだ。
 これほど、一貫したまとまった形で、明確に構想、方針を述べる大臣というものを久しぶりに見たような気すら僕はしている。(もちろん、それは本来嘆かわしいことだ)

 外務大臣が、しかも自ら「戦略」と表現して示す外交方針でありビジョンでありが、toyboxさんの指摘するとおり、これほど軽い扱い(=報道)しか受けないというのは問題ではないかと思う。

 ちなみにこれに関する新聞報道は例えば、

 麻生外相「中国の台頭を歓迎」、軍事費など透明性要求(読売)
 麻生外相、中国に姿勢転換促す(朝日:キャッシュ)
 麻生外相、中国に建設的勢力へ成長求める(日経)

 これらは、いずれも外相の外交構想というよりは、単に「中国のことは何て言ってる??」的な(厳しい言い方をすれば例により所詮ワイドショー的な)関心でもって恣意的に焦点が断片に設定されて報道されている。

 これでは外務大臣の全体的構想のイメージというものは読者(国民)には全く伝わらない。

 もっとも、強いて言えば上記では読売だけが、アジアにおける日本の役割の「三つの定義」に触れるなど、比較的マシではあるが、やはりこの演説の構造であるとか全体像、主旨ということは伝わらない。

 仮にも大臣が(今回は外務大臣だが本来その職掌にかかわらず)自らの担任分野における構想、大方針を謳っているのに、それを報道せずして何の報道か、と思う。
 toyboxさんが指摘するとおり本来全文掲載にも該当すると思われるのだが、仮にその余地がないとしても、せめて骨子を要約して伝えるべきではないだろうか。
 それすらも余地がないなら、外務省のページへのリンクでも載せろ、一行だ ^^;)、とでも言いたい。

 成熟した民主主義国民はそうした不満をもつべきだろうし、また逆にいえば、今回のような(極論すればある意味ワイドショー的)報道姿勢は読者(国民)をなめたものだとも僕には思える。

 これはテレビとて同様(いや、もっとひどいか…)、外務大臣が述べる外交戦略構想についてその要旨を伝えた局は無かった(もちろん解説もない)ように思えるが、同じ日に、社会ニュース、といっても犯罪、事故、事件については格別の展開なくとも実に物見高く繰り返し長時間を充てて熱心に伝えている。^^;)

 どのようなトピックスであれ、「民意」だとか「世論」というのは、賢明な判断能力があったとしてもそれは判断材料があってのことだと、国民には個々に生活と職業分担があるのであって、政策個々にいちいち専門的に通じているわけでもないしその必要もないと、そして、であるのに適切な判断材料を提示せずに安易に「民意」という言葉を使うのは時に卑怯でも狡猾でもあると、常々そのように僕はここでも書いてきているが、それはただ政官の姿勢ということだけではなく、マスコミの「質」ということも大きく影響する。


 ところであらためて麻生外相の演説文だが、
 ひとつのスピーチとしても、実によくできたものだと思う。
 論旨の流れが明確かつ自然で、またきわめて平易でわかりやすい。
 本人かあるいはスピーチライターの手によるものかなどということはともかくとして、よい原稿だと思う。(という点においても一読の価値はあるかもと僕は思った)

 その内容(構想)そのものについての個人的見解は、また追って別に述べてみたいと思う。


posted by Shu UETA at 16:47| Comment(4) | TrackBack(1) | 天下-その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あらてめて演説を読み返してみましたが、良いですね。最初に読んだときは衝撃すら受けました。こんなことを言える政治家がいたんだってことに。麻生外相のことを多少誤解していたかもしれません。なにせ、口からポロポロ、禁句?をこぼしている人ですから(いや、それはそれで、僕自身は評価しているのですが)

内容自体は、僕も東アジア共同体、ん?という感じですが、名スピーチだと思います。そして、Shuさんと同様、僕も政治家のこういった演説は、過去に記憶がありません。

小泉首相が国際会議等で演説する内容も掲載されるので、読んではいますが、比べるまでもなく麻生外相の演説の方が心をうちます。教科書に載せても良いくらいです(ちょっと大げさか)(^^;

>仮にも大臣が(今回は外務大臣だが本来その職掌にかかわらず)自らの担任分野における構想、大方針を謳っているのに、それを報道せずして何の報道か、と思う。

ですね。

マスコミは特定の国にとらわれすぎてます。外交は、大抵中韓がらみで取り上げるし、そのせいかどうかはわかりませんが、本質をとらえていないのではないかと。
それと、政府演説をまるごと掲載したら、政府広報紙か、と言われることを恐れているのかもしれませんが。
Posted by toybox at 2005年12月09日 17:34
> toyboxさん

 おわっ
 素早いレス!
 ありがとうございます ^^)
 (コメントしようかとも思ったのですが、ダイレクトにT/B記事にしました)

 麻生氏については、僕も「違った意味の方で」まんざらでなく評価していたのですが、今回の演説を見ると、また違った一面もあるのかなと感じ入りました。

 日本の政治家は、演説とかスピーチが、どうも面白くない(無味乾燥であったり、聞かなくてもわかるような教科書的に過ぎないものであったり)ことが多いように思うのですが、これはよくできた演説だなぁ…と、思いました。

 簡潔明瞭、平易であって、堅苦しくない柔らかさもあり、論旨の流れが自然、と、昔教官をやっていた頃であれば幹部学生にスピーチの参考例として配布したいくらいで。^^;)

 今回も中国は速やかにこの麻生演説に強く反論していますが、ひとつには、マスコミの取り上げ方によるところもあるのかなと思いました。
 報道の論調からすると、強く反論しておかないわけにもいかない感じで。
Posted by Shu at 2005年12月09日 17:46
僕もちょうど読んだところでした。東アジア情勢の論文を書く準備をしているので、グッドタイミングでした。いつもこんなのあったかなあ?って感じて読んでました。英語版も併記されていたので、なんとか仏語に直せそうです。しかし外務大臣の方針演説みたいなものなんだから、複数言語で作ってほしいなあ。森前首相も阿部さんを次の総理にしたくない(下記、本音でしょう)みたいだし、麻生総理誕生か!!
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051209-00000144-mai-pol
Posted by imaichi at 2005年12月10日 06:20
> imaichi

> 森前首相も安倍さんを次の総理にしたくないみたいだし

 代表して森さんが言ったような感じだよね
 次は貧乏くじになりやすいから…麻生さんも、どうなんだろ、ね。
Posted by Shu at 2005年12月11日 09:32
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