件の、またの竹島問題
あえてコメントすべき価値もないのかもしれないが、
まず政治的価値観を度外視して、単に策としてみた場合、
端的に言って、今回の政府(というより官邸)の処断は愚策というほかない。
政策、外交策であれば、策というものは、自らの利、構想を踏まえ、何らか益するところを求めるものだが、
これほど見事に害のみあって益のない策というのもめずらしい。
これを戦理に則れば、戦力の逐次投入の愚というものにあてはまる。
総理の予ねて執心するところの近隣阿諛ということであれば、そうした方針の是非はともかく、解説書への竹島記載などせぬがよい。
せぬと言い切らぬまでも、今回は見送るという政治判断の言い様はある。
青瓦台は否定しているが、大統領が「今はまずい。もう少し待ってくれ。」と懇願したのであれば、それを容れておけば大いに彼を助けもし、また貸しのひとつともなり得ただろう。
であれば総理の東アジア外交方針にも沿い、かつは、大韓民国を大いに満足させ得ただろう。
これを求めるならば、まさにこれが策の利。
ではなくて、
領土という問題について国家の意思を真摯に示すべく、また、北方領土に関わる対露外交とのバランス等からも、政府として言行の一貫性を保つのであれば、国の差配役ともあろう者がお茶を濁すようなことをせず、予ねて主張し来るところを明確に記述させればよい。
であれば、政府、外務省が公式に述べてきた、我が国固有領土の不法占拠という主張は、外交、安全保障、教育に関わらず一貫し、
領土問題に真摯に取り組まんとする国内の諸派、ならびに文部科学省の領土教育方針を満足させ得ただろう。
これを求めるならば、これが策の目的。
しかるに今般、内閣総理大臣ならびに官房長官の採択はどうだろう。
いずれの方面にも諂う結果か、あるいは妥協即ち問題解決という刷り込みの故か、実に半端も半端、中途半端な策を弄して、関係諸方面の信を失う。
先方のマスメディアでは、今度の日本の振る舞いぶりを「小賢しい」と罵る文字が躍ったが、哀しいかな、実に的を射た評とするほかない。
こういう場合を指してこそ、小ざかしいとは言うものだろう。
愚かであることに変わりはないと思うが、
こういう見方をすることもできる。
日韓首脳間では、今般の問題については双方一歩を譲る形で妥協済み、
その際、
日本側は表現を緩めたうえであくまでも淡々と事務的にすすめること、あらたな声高な主張等は行わないこと、
韓国側は、形式ばかりの非難措置はとるが、あらかじめ了承のこと。
駐日大使を、召還を緩めた形、用向きによる一時帰国とすることもあらかじめシナリオ済み。
福田氏、町田氏の落ち着きぶり等から察するに、または韓国側の全く取り乱しぶりもない安定した非難措置のとりかたからすると、
あるいはこうしたシナリオはあったやもしれない。
この場合、策のレベルとしては一段を上げるが、しかし我が国にとって賢明な方途であろうかといえば、賛同し難い。
(この項、あくまでも可能性の問題)
さて一方で、
価値観を度外視しても策の策に足らないところは前述として、
僕の見るところでは、この問題について韓国に譲るべきではないと思う。
まず、竹島を放棄すべきか否かという最初の選択肢において、現時点で判断する限り、これは放棄すべきではないと考える。(あえて詳説は措く)
(世の中の転変次第によっては将来を今確言することはできないが、あくまでも今日目下の時点において。)
放棄せぬのであれば、次のことは避けねばならない。
・一貫性を欠いて言を左右にすること
・同環境下にある他の領土問題との間で標準を欠くこと
・各行政部門をはじめ国内諸部門で温度差が顕著となること
また、総理も韓国人もともすると友好であり協調ということをいうが、
そも、友好協調なるものは、相手の理非に終始迎合するようなものではなく、そうでなくては友たり得ずということではないというのは、およそこの地球上の多くの場所において多くの人々の等しく理解するところの道理である。
我が国は、堂々とその道理を述べて、諭すのみだ。
なお、あくまで付言だが、
国際司法裁判所の管轄を期待する声も世にあるが、
これは一筋縄の話ではない。
理由、
・外交上の常識としても、実効支配している側にとっては、領土問題の存在を認めること自体が自己矛盾であり、実行支配側が領土問題の存在を認めて提訴に同意するのは困難である
(我が国は、尖閣諸島において領土問題の存在を認めていない)
・さらに、諸資料を集め真実公正なる判断を仰げば、我が国の主張に大いに理のあるところは、韓国側においても承知と思われる。
方策としては、
1−1案
竹島奪還の軍事作戦を実施し、実力で我が国実効支配をとりもどす
1−2案
竹島奪還の軍事作戦を実施し、国際機関の調停を仰ぐ
2案
経済水域絡みであれ、観光絡みであれ、あるいは漁獲あるいは金属資源がらみであれ、直接的には竹島問題でない摩擦、紛糾について国際機関に調停を仰ぎ、竹島をリンケージさせる
3案
国連等の場において、領土紛争解決の枠組みとシステムを提唱し、問題提訴のルールづくりを行う
といった別の手をあわせ用いねば、国際機関への提訴など、韓国のおよそ認めるところではないだろう。
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アホな質問かもしれないのですが、上田さんが挙げられた方策の中で、いま最も現実味があると思われるのはどの方策ですか?そちらの方面に関する知識が全くないのですが、2案のような「リンケージ」をするとなると、調停を仰ぐ国際機関というのは国際司法裁判所以外のどこかということになるんでしょうか?
回復の現実味自体がなかなか見えない感じですが…
僕なら、この中なら3案でしょうか。(いずれにしても簡単ではないですけど)
領土問題は、日本のみならず世界にあります。
そして、国際司法裁判所は双方の同意によらなければ管轄できないので、この問題について有用でない場合が多いのは既に認識されているところ。(わずかに機能した例はありますが)
よってそうした問題の軍事紛争転化を防止するべく、領土問題解決に特化した紛争処理のシステム、枠組みを国連に設置することを提案してみるのは面白いかもしれないな、と。
竹島問題のためというよりも、あくまで世界問題として提唱します。
そのためには、いくつかの積極的ステップを踏む必要があるでしょうけれども、
例えば現実の領土問題を抱える国、地域に調査、調停を実際に積極的におこなって、問題点等を研究し、世界の領土問題のいわばエキスパートになっておくことも大切でしょう。
(これ自体が、上記案の成否を別にしても大国の一角として期待される国際社会への貢献となる積極外交といえますし。)
ちなみに、2案の場合の調停を仰ぐ機関というのは、必ずしも国際司法裁判所でなくとも、問題の性質に応じて選択すべきと思います。要は知ろうが知らざるが、第三者を引きずり込むということです。(その際、あらかじめ意図を通じている第三国をあたかも客観者として連係プレーがとれれば最も理想的ですが。)
いずれにせよ、簡単ではないですよね。
なるほど、演繹的な形から自国に益する方向に持っていくというわけですね。そうすると、「第三者を引きずり込」んでのテーブルが想像できるような気がします。
確かに、そうなるとそのシステムをつくる協議自体が従来どおりのパワーポリティクスの舞台になってしまう可能性と戦わなければならないという意味で、上田さんのおっしゃるとおり簡単ではないですよね。直接折衝にあたる方の苦労はいかばかりかと思います。
公正な領土問題解決のシステムというものが幻想の一言で片付けられないためには、お話にあったような積極的かつ徹底した調査・研究の質量こそが問われるのですね。
夏期講習と通常授業でいつもより体力を要する時期がやってまいりましたが、どうぞ夏風邪・夏バテなど召されませんよう!
いよいよ始まりますね〜
おたがい 頑張りましょうっ!!
すんだら打ち上げやりますか ^^)
実際上はグダグダなし崩し的実効支配に対して同じくグダグダなし崩し的対抗というか、
刺激しないように日本人が立ち寄るようにするのはいかがでしょうか?
例えば、独立記念館とセットで歴史観光コースに組み入れるとかです。
その結果、日本人に危害が加えられることがあれば、きっかけというか、
少なくとも大きな貸しにはならないでしょうか?
ひさしぶりでっす!!!!
うれしいです!
レス遅れてすみません、たまたまここ数日見てなくて。
今度メールでもさせてもらいます!!
ところで
> グダグダなし崩し的実効支配に対して同じくグダグダなし崩し的対抗
たしかに。最初の摩擦をやり抜ければ、よいかもしれませんね。あるいはおっしゃるとおり、最初の摩擦で問題化するか…。
というより、それよりも何よりも、
またコンタクトとれて、うれしいです!
またよろしくお願いします!